ヒャクニ ページ13
ゲームセンターの騒音は、うるさいと感じるけれど、特に嫌な気はしない。
前にやったコインゲームのコーナーを通り過ぎ、ゾムは百円でできるゲームのコーナーの前でとまった。
ゾムが嬉々と千円を崩して、私の手を引いて座ったのは赤いレースゲーム、通称マリカ
「こっちがアクセルで、こっちがブレーキな!」
私にルールからやり方まで教えてくれるゾム、まさかの裏技まで教えてくれた。
ゾムは初心者には優しいのかな
なんて思ってた時期がありました。
まさかの10連敗、崩した千円分の百円はどんどん機械に吸い込まれていきました。
ゾムに教えてもらったテクニックでなんとか2位は取れたものの、ゾムは私を一度追い越すのだ。
だから私は一周遅れでゴール、やり込んだ人はやっぱり違う。
『んん〜!!ゾム強い!!速い!!ね、もっと教えて!!!』
負けても楽しいからゲームセンターは沢山人が集まるんだろうね、負けても、次こそはって言う闘争心とか、うるさいコインゲームの音も、ハマる要素の一つ
ゾムは私の言葉に少し驚いた顔をしてから、にっかりと笑う。
「おう!任しとき!!おすすめ片っ端から教えたるわ!!」
コインの騒音で消されそうな声を張り上げ、聞こえるように言った。
それから太鼓の音楽ゲームや、ゾンビを撃つシューティングゲーム、足を使うリズムゲームも、いっぱいやった。
それが楽しくて、気づけばもう日は沈んでいた。
「はぁーもう7時かー、んふふ、今日は楽しかったなぁ、また行こうね」
自転車を押しながら、先程から静かなゾムに言う。
ゾムは少しの間を開けて、俯いていた顔を上げ、深くかぶったフードを脱いだ。
ふわりと退けられたフードから、綺麗な黄緑の瞳が現れる。
長い茶色の髪は、そよそよとふく風に揺らいていた。
いつになく真剣な眼差しを向けられ、私は言葉が出てこなくなる。
思わず足を止めて、押していた自転車を止めた。
ゾムも止まって、私を見下ろすのだ。
そして、唇が震えた。
「なあ、俺さ
Aの事、好きやねんけど」
ぽつりと溢れた私に向けられた好意の言葉
私は一瞬目を見開いて言葉を飲み込む。
ゾムは凛とした表情で月明かりを背にしている。
なんともロマンチックな背景だ。
ハラリと鼻の上に落ちる髪をそのままに、私を見つめていた。
…そうか、"今"か
ゾムの目をじっと見て、首に残った包帯を撫ぜた。
『…＿＿＿＿＿＿
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サラミ - 一気読みさせていただきました!!最高です。ありがとうございました!! (2022年8月3日 10時) (
レス) @page30 id: 82adb6822c (このIDを非表示/違反報告)
ネミ - 読み終わった時めちゃくちゃ泣いました！本当に面白い作品をありがとうございます！弦生夏様のご活躍を願います！ (2021年8月27日 16時) (レス) id: 6a4c48ebc2 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - （続き）最高の時間でした。感謝してもしきれません。「視えてます」もこの作品の前に読みまして、間違いなく「勘違いすれ違い」が大好きになった原因は弥生夏様のお陰ですw 今後も応援させていただきます！最高の時間、ありがとうございました！ (2021年7月25日 19時) (レス) id: 9dbbda50e8 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 読了しました！完結おめでとうございます！勘違いから生まれるすれ違いが毎回濃くて面白くて、かと思えば私に無い面白い考え方が幾つも出てきて、展開も最高で飽きず、最後まで楽しく読めました！個人的に、この作品のお陰で気付けた自分の気持ちも幾つかあり、（続く） (2021年7月25日 19時) (レス) id: 9dbbda50e8 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 誤字の報告です。106の初めの方、「に聞くわない」じゃなく「気に食わない」じゃないですかね……？ (2021年7月25日 19時) (レス) id: 9dbbda50e8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生夏 | 作成日時：2020年6月1日 21時
