からっぽの神様 (ページ10)

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【10】ワクワクとドキドキページ10

入学式を終えた新名は、その後も慌ただしく日々を過ごし、そうして３日経って少し落ち着いた頃。

　部活動の入部説明会を手伝う流れとなった。

　「あ、あなた、経験者よね」
　「あ、っはい！、新名Aといいます！」
　「新名さんね。私は妹尾。妹尾梨可。よろしくね。」

　──放課後。
　今日は体験入部の日ということで、３日ぶりに弓道場へと足を運んだAだったが、その途中で涼しげな黒髪のショートカットの女子生徒と鉢合わせた。
　Aは彼女からの問いかけにしどろもどろになりながらも、不意に背筋をピンと伸ばす。
　彼女の持つ雰囲気がどこか冬の朝のように澄んでいたから自然とそうなってしまったのだが、Aのそんな心情を知らない妹尾は首を傾げながら、「じゃあ入部説明会の手伝い、一緒にしてくれないかな」と言ってAを更衣室へと招いた。

　Aは妹尾から導かれるまま、持ってきた弓を弓立てに置き、矢筒をその傍に置いて更衣室へと入った。

＊＊＊

　更衣室は男女共用らしく、木製のロッカーには男子のものと思しき荷物もあった。
　自分より早くきた人たちだろうか。
　そんな事を考えながらも、Aは妹尾から指示された場所に持ってきた白いリュックサックを置いて、弓道着に履き替える。
　どんな人達がいるかなとワクワクした気持ちで着替えていると、妹尾がAを見て微笑みかけた。

　「なんか、嬉しそうだね」
　「あっ、はっ！いえ！、す、すみません」
　「同じ一年だから緊張しなくていいよ。でも、なんでそんなに嬉しそうなの？」
　「あ、うん、ありがとう！……私、同年代の子とそげん弓道する機会無かったけん……」

　Aがそう呟くと、妹尾は瞬きを繰り返した。

　言葉遣いが明らかにこの辺とは違う。どこか遠くの離島や田舎から来たのだろうか。

　妹尾はそんな事を思いながらも、嬉しそうにニヤニヤするAを見ながら、彼女の肩をポンと叩いて言った。

　「でも、これから三年は一緒にやるからね。改めてよろしくね」

　妹尾がそう言って笑いかけると、Aは花が開くように綺麗に笑って、うん！と大きく頷いた。妹尾はAの着替えが終わるのを待ってから、二人で本座(ほんざ)へと向かった。