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side,Kota。



頭の中の闇が辺りを覆う。


抜け出そうとしてるのに抜け出せなくて、助けてと手を伸ばそうとしても


伸ばせない。


きっとこれは夢の中。そんなの頭では理解してるけど。


顔の見えない人が俺に近づき膝を床につけた。


「偉いね。宏太。」


頬を撫でるその人。


あぁ、もう忘れてたよ。


何年も会ってない。優しくて、凛としてるこの声。


また聞きたいって思ってた。


宏太「……母さん。」


顔は見えない。


でも感覚はある。


この温かさも変わらない。


本当にここは夢か?


「ほら、宏太。やれば出来るだろ?」


近づいてきた背の高いその人は、俺の頭をガシッと強く撫でた。


宏太「……父さん。」


懐かしいその声とその温度と感覚に、口角が上がったのを感じた。


この夢なら、醒めなくていい。


ずっとここにいたい。


気づけば辺りが草原に変わっていて、俺の手にはサッカーボール。


「遠く、あの川に向かって蹴ってみろ。」


宏太「遠く?……父さん。俺に川なんて見えないよ。」


「ほーら、やれば出来るじゃないか。」


宏太「……俺はまだ蹴ってないよ。」


「宏太きっとプロのサッカー選手になれるわ。」


宏太「……俺は、もうサッカーなんて。」


どんどん話が噛み合わなくなって、知らないうちに俺は第三者のようになっていた。


俺に届く声が2重にも、3重にも聞こえて


「あー、暗くなってきたな。」


“ねぇ、いつまで寝てるの?”


「お腹もすいてきたわね」


“ごはん食べたい。”


「そうだな。今日は何にしようか?」


「腹いっぱいたべような。」


“白米あるかな。”


「ほら、もう帰りましょ?」


“いかないで……”


宏太「父さん。母さん。……それは、」


父さんと母さんは、頭を撫でたり


頬を痛くなるくらい撫でる。


褒めちぎって、3人で笑うんだ。


“置いていっちゃ嫌だ。”


でも、それは


“こーた。”


宏太「……俺じゃないよ。」


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華代(プロフ) - はじめまして。 一気読みでしたが、素晴らしい作品で、感動しました。 また初めから読んでみたいと思います。本当にお疲れ様でした! (2021年2月4日 18時) (レス) id: d952e3b0da (このIDを非表示/違反報告)
まる - 今までお疲れ様でした!俺らシリーズ含め猫チャロさんの作品が大好きです。占ツクから離れた時期もこの作品だけは思い出しては読み返していました。完結まで書いて頂き感謝しかありません。この作品に出会えたことを幸せに思います。 (2020年8月6日 4時) (レス) id: 9463c2f9d9 (このIDを非表示/違反報告)
You(プロフ) - チャロちゃん居なくなってごめん。影でずっと見てたよ。今までおつかれ様でした!悠樹 (2020年2月14日 11時) (レス) id: 6822cd0dae (このIDを非表示/違反報告)
光音 - こんばんは。今お話読ませてもらいました。猫チャロさんのお話、大好きです。伊野尾さんのキャラ設定、私の中のどストライクでした。これからもまだ読んだことのない猫チャロさんの子供、読ませてもらいます。ありがとうございました。 (2020年1月27日 20時) (レス) id: df7638da7e (このIDを非表示/違反報告)
青空と虹(プロフ) - 今までありがとうございました。そして、お疲れ様でした。寂しいですが、猫チャロさんの子供たちを大事に大事に読み返そうと思います。このアカウントを作って活動を始めたのは、猫チャロさんのお話を読んで感動したのがきっかけでした。人生を変えてくれてありがとう。 (2019年11月15日 1時) (レス) id: 4cc456b6d8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:猫チャロ | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年10月6日 18時

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