10 ページ12
防衛術の授業を終えた後、私は精神的に少し疲労していたけれど校長先生との約束を破る訳にも行かず、途中までドラコたちに見送られながら校長室へ向かった。
『失礼します、A・アシュリーです』
「お入り、よう来たのう」
重厚な扉をノックすると、扉の向こうからしわがれた友好的な声が聞こえてきた。その声に従い扉を開けると、中には半月型の眼鏡をかけた校長が笑みを湛えながらこちらを見ていた。
「美味しい紅茶が入ったんじゃ、ほれお座り。甘い物は平気かの？」
『はい、平気です』
お堅い話をすると思っていた私は茶会が始まりそうな雰囲気に面を食らった。椅子に背もたれをつけず姿勢よく座ると、崩しなさいと言われたので、渋々ゆったりと椅子に座った。
そして、校長先生が2人分の紅茶と、洋菓子を机に置き、私たちはお互い向かい合う形で座った。
「この紅茶は逸品じゃぞ」
『確かに、いい香りですね』
花と果実の様な香りが鼻腔をくすぐり、つい手を伸ばして一口飲んでしまった。旨みと甘みが強く、とてもまろやかで渋みもない穏やかな味に私の緊張の糸は弛緩した。
そんな私の様子を見て、校長先生は笑みを深くした。
何となく、してやられたというか、上手く罠に嵌ってしまったようなそんな心地がして、私はティーカップをソーサーに戻した。
「セブルスと仲が良さそうで何よりじゃ」
『えっ？教授が私と仲がいいなんて言ったんですか？』
「本人からは聞けないが、傍から見れば分かることじゃよ」
仲が良い、という表現からは程遠いような関係のような気がして、私が若干顔を顰めると校長先生は声を上げて笑った。
「まあ、表現にしっくり来ないというのなら…上手くやれている、と表現しようかの。ハリーの件についても2人で支え合いながら進めて行って欲しいのじゃ」
いよいよ本題らしい話題に私は再び姿勢を軽く正した。
支え合いながら、と言われても私が任されているのはただポッターを見張ることで、まず仕事の比重が異なっているのだ。
そう思って、私は校長先生にひとつ問いかけた。
『支え合う、ということは私は監視の仕事を超えて、ポッターを直接守っても良いという事ですよね？』
「好きなように捉えてもらって構わんよ。セブルスは君が深く関わることを嫌がると思うがのう。して、Aよ。何故そこまでしようと思うのじゃ？」
そう聞く校長先生は私を試すような、探るような瞳をしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 254人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
マニ。(プロフ) - 猫田さん» ✉️。わかりました！これからも更新応援してます！ (1月5日 15時) (
レス) id: b32654e3a5 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - マニ。さん» ありがとうございます！お気持ちは大変嬉しいのですが、今はこちらの作品の更新に集中したいと思っているので失礼ながら遠慮させて頂きます;; ですが、お話したいと思って下さって凄く嬉しかったです！ありがとうございます (1月5日 15時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - もちもちさん» ありがとうございます！亀更新ですが、よろしくお願いします (1月3日 4時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
もちもち - とっても面白いです！作者様のペースで更新頑張ってくださいね！ (9月18日 15時) (レス) id: c72e216da9 (このIDを非表示/違反報告)
猫田(プロフ) - 箱さん» こちらこそ、読んで頂けて嬉しいです！ありがとうございます (2023年2月25日 14時) (レス) id: 922d1d8c49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：猫田 | 作成日時：2023年2月9日 21時
