僕らの荷物。 2 ページ45
僕がうなずくと、彼女は決心したかのように一つ深呼吸をし話し出した。
『自分、人に期待されることでしか存在意義を見つけられないんです。誰かに頼られたり、信頼されたり、そうしないとまるで自分が否定されてると思ってしまうんです。』
「…」
『でも、期待されて応えた時に裏切られてしまうことが何よりも怖いんです。』
彼女の声は震えていた。
今まで凛として透き通って聞こえていた彼女の声が、何かに怖がっているかのように震えていた。
『自分が一生懸命やったことが利用されていただけで、使い捨てのようにされることが怖いんです。』
彼女の目は今にもあふれだしそうな涙でいっぱいだった。
真っ直ぐに向かいの壁を見つめているはずだが、まるでここにいない何かに訴えかけているようだった。
『だから、皆さんに誘われた時も怖かったんです。クイズは自分が初めて頑張ろうと思ってやったことだった。でも、結局は利用されて終わってしまった。もしまた、この場所でも同じ目にあったらどうしようって。』
「……大丈夫です…」
気づかないうちに僕は彼女の手を強く握りしめていた。
じんわりと手のひらから彼女の少し高くなった体温を感じる。
「僕はもちろん、ここにいる人たちは皆、貴女のことを利用しようだなんて思っていません。それに、もう一度貴女に心からクイズを楽しんでもらいたいと思っています。」
彼女の目から一つ光るものが零れ落ちる。
かすかにふるえていた手をもう一度強く握りしめる。
「これは僕個人の考えですが、できることならば、貴女のことを救いたい。…貴女が僕にしてくれたように。」
彼女は驚いたように、僕に振り向く。
赤くなった目が不思議そうに僕を見つめる。
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おいら。(プロフ) - あかねさん» ありがとうございます!実は自分も結末は探り探りでして...!ぜひこれからも楽しんで頂けるとありがたいです!ご愛顧のほどよろしくお願いします!! (2019年8月28日 17時) (レス) id: bd7a0fa47b (このIDを非表示/違反報告)
あかね(プロフ) - どうなっていくか気になります。、河村推しとしては最高でした!儚い感じも含めて河村さんなんですよね (2019年8月28日 10時) (レス) id: bdb71ec1a3 (このIDを非表示/違反報告)
おいら。(プロフ) - 晴夜さん» ありがとうございます!Pコンビの友情にはいつも感動しております…!自分の作品でそれが伝えられるよう精進敷いてまいります!更新ペースも落とさないよう頑張りますので、これからもご愛顧のほど、よろしくお願いします! (2019年8月26日 22時) (レス) id: c936dc85f7 (このIDを非表示/違反報告)
晴夜 - 初コメ失礼します!此方河村さん推しなもので…!pコンビの愛を感じますね…はい!これからも楽しみにしてるので自分のペースでがんばって下さいね!応援してます (2019年8月26日 21時) (レス) id: 58376c201f (このIDを非表示/違反報告)
おいら。(プロフ) - grayさん» ありがとうございます!!!これからもご愛顧のほどよろしくお願いします! (2019年8月26日 17時) (レス) id: bd7a0fa47b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:おいら。 | 作成日時:2019年8月19日 10時