マフィアな私達の同居生活【中原中也】

太宰の優しさ ページ28

A

「私が何故中也を恋愛対象としなくてはならないのかは置いておいて、何で太宰は私に告白させたいの？」

態々お節介を焼くような人間か、この人。

「中也の結婚式に乱入するのが私の昔からの願望だからさ！」

盛大に言い放つ太宰に今日最大に苛ついた。

「だからって何で私？」

「君しかいないだろう中也には」

「…もしそうでも貴方を招待しないと思うわ」

「呼ばれなくても行く。潜入なんて朝飯前さ」

マフィアを抜けて少し落ち着いたと思っていたけど、矢張訂正。太宰は何処にいても太宰。



「ということで、告白しろA」

マフィア時代のトーンで言われて、返事に困る。私は中也から睨まれるのと、太宰のこの低く這うような声が苦手だ。

「A？」

「…これは私達の問題だわ」

「ああそうかもね」

「なら、そっとしておいて」

買い物袋を手に、太宰の前を通りすぎようとした。

「一つ忠告をしておこう」

太宰の声に思わず足が止まる。

「友人でも恋人でも、大事な人は簡単に居なくなる。だから何かを伝えたいなら早いに越したことはないのだよ。後悔しない為にもね」

「…それはどうも」

地下鉄への階段を降りる時、ちらりと後ろを振り返る。
太宰は遠く空を見ていた。

「ああそうか、天衣無縫ね…」

小さく呟いた声は空に消えていく。

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊

織田作と太宰
上手く言えませんが二人が好きです

生姜焼き→←元同僚

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す