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【服装】
普段は糊の利いた真っ白なシャツに、精緻な刺繍が施された黒と暗い灰色の襟の天鵞絨色のベストと、黒いコルセットベルトを着用している。ベストのボタンには琥珀が嵌め込まれており、その縁はシンプルだが細かい植物の模様が刻まれている、やや黄土がかった金ボタンのつけられている。また、ネクタイではなく、革紐を用いたカメオや宝石のループタイを使用していることが多く、下は白か黒のキュロットを穿き、折り返し付きで膝丈の黒か茶色のハイヒールロングブーツを履いている。上はベストを着ずに、紺色と黒の切り返しのある丈の長いカーディガンを着ていることが多い。シャツの袖にシャチの姿が刻まれたカメオカフスをつけている。黒か紺色のストールを身体に巻いていることが多いが、これは人間姿の時は肌の露出を控えるべきという一族のルールに基づいたものである。スーツを着ることもあり、洗練された、気品がある、優雅な、といった印象を持たれやすい。時たま雪のように真っ白な、毛皮のコートを羽織って出勤していることがあるが、これは実は彼の伴侶の遺体から作られたものであり、これを着ている時は精神的な安定を求めている事が多い。周囲にはこのコートは今は亡き彼の伴侶が嘗て身にまとっていたものだと説明している。…同僚達の内数人はその事実に気付いているようだが。ヒートの最中はこのコートを抱き締め、孤独に震えながら静かに泣いている。
式典などの際には軍服に似た礼服を着ており、シャツやブーツなどは変わらないものの、ネクタイはループタイではなくクラバットに変え、それにブローチをつけている。これはかつての伴侶が身につけていた形見であると同時に、彼にとっては御守りである。そのためか他人がこのブローチに触れようとするのを何よりも嫌がる。そしてこの礼服の上に、精緻な刺繍が施され、裏地がマリンブルーの黒いマント、或いは、丈の長いアルスターカラーの黒のフレアコートを羽織っている。黒い革手袋をつけているが、これは体温の高い他の獣人の肌の触れて火傷をしないようにするためのものであり、必需品である。ブローチには伴侶の故郷の最北端にある鉱山から採れた大粒のアレキサンドライトが用いられており、普段は彼の瞳の色に似た、青みを帯びた美しい緑色をしているが、ロウソクや蛍光灯など人工的な明かりの中では彼の髪の色に似た、ルビーやガーネットにも劣らぬ鮮やかな赤色…伴侶の瞳の色に似た、美しい色に変化するのである。
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作者名:ねこうさぎ | 作成日時:2021年1月12日 18時