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シャチの獣人の子どもたちの成長は(動物としてはやや遅いものの人間よりかは)早く、一、二年ほどで離乳し、全獣姿か半獣姿で泳ぎ始めるようになるのだが、実はこの時期が最も大変。動けるようになると子どもたちはすぐにどこかへ行こうとするのだが、母親は人間同様出産直後は疲労などでほとんど動けないため群れの中では泳ぐ速度が最速の彼がベビーシッターという名の牧羊犬役を任されることが多く、結果数年に一度生まれる家族内での子どもや、親戚たちの子どもを含めた十数匹の子ども達を育て上げることとなった。また、母の親類がリーダーとして構成している群れでもその殆どの子どもが幼少期に彼に一度は世話をされており、幼少期の記憶に両親の顔より彼の顔の方が残っているという者は多い。
定期的なヒートのある種族であり、彼の場合はヒート前は精神的に非常に不安定になることが多く、
他種族のように抑制剤でヒートを完全に抑え込むという方法がないわけではないのだが、そもそもシャチが種族的に子どもの出生率が非常に低いこともあり、地域によってはドクターストップが入ることもある。地域や群れの方針によって差異はあるものの、総じて抑制剤の服用をあまり勧められていない。…というよりも、先述した出生率の低さから抑制剤の服用どころか薬そのものが認められていないことが多い。彼の群れでは抑制剤やその使用に対しては特に何もないが、彼自身には抑制剤アレルギーとでも言うべきものが存在しており、服用すると何らかの拒否反応(食物アレルギーなどで言うところのアナフィラキシーショックのようなもの)が出るのである。おそらくこれは彼の種族の祖先であるシャチが海の生態系の最上位種に位置していること、そしてそもそも多産ではない上に、過酷な環境下で生活するために子どもの死亡率が高いことに起因しているのではないかとされている。ヒート、つまりは繁殖期の抑制しようとすると、本能がそれに対抗して脳にヒートを発生させる脳内物質を過剰に生産させ、そのためにヒート不順のような事が起こり、体内が一時的なパニック状態になるのだろうと考えられている。シャチや、シャチの獣人の生態の調査があまり行われていないことから解明されていない謎がまだ多いと言うこともあり、下手に薬剤の投与をせず、ヒートが自然に終わるまで耐えるという方法を取らざるを得ないのである。
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作者名：ねこうさぎ | 作成日時：2021年1月12日 18時
