弱虫と体幹おばけ［角名倫太郎］

弱虫2匹 ページ4

そして中学3年の秋。

私は所属していた吹奏楽部で、倫太郎はバレーボール部でそれぞれまあまあ優秀な成績を残し引退。私は2年の時にはソロで全国まで行ったし、倫太郎も個人で賞を貰ったりしていたので2人とも推薦でどこか高校を探すだろうと思っていた。

私は音楽が盛んな高校を第1志望に掲げ、入試の実技試験のために勉強とトランペットの両立に励んでいた。倫太郎もそんな感じなんだろうな。と、引退してからもシューズを片手に体育館へのそのそと行っているのを見て勝手に思い込んでいた。

しかし、少しだけ思っていたものとは違った。
バレーボールの推薦で、東京のではなく、
兵庫県の高校へ行くのだという。


お母さんから聞いた私は急に暗闇に突き落とされたかのようになった。まるであの1人ぼっちの
リビングで1人であることに気づいたみたいに。

そこからの行動力は自分でも驚いた。
稲荷崎高校、そこは全国有数のバレーボールの強豪校であり、また、全国大会への出場実績もある吹奏楽の強豪でもあったのだ。

これは幸いと私はすぐに情報を集め、お母さんに頼み込み、受験先を変えた。

兵庫県、稲荷崎高校で吹奏楽がしたい。
ソロじゃなく、団体での演奏がしたい。

そう最もらしい理由をつけて両親を説得し、
これまで積み上げてきたソロのキャリアもピアノのレッスンも投げ打って、音楽科のある高校の推薦も蹴って勉強に打ち込んだ。

結果は合格。県外から受けて勝てるものだろうかとすごく心配になっていたが、本当によかった。

その後倫太郎は引越しに入寮に忙しく春休みを過ごし、卒業式の夜に私と倫太郎の家族でご飯を食べに行ってから会うことは出来なかった。

まあかくいう私も同じく引越しや入学の準備に追われ、肝心なことをすっかり忘れていた。


それから約1年と半年、私はまだ倫太郎に
私が稲荷崎高校にいることを言えていない。

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