【るろうに剣心】胡蝶蘭 〜京都ノ巻〜【緋村剣心】

錦絵 ページ28

剣心「おお。これはこれは、月岡殿。久しぶりでござるな。」

長閑な昼下がり、ある男が訪ねてきた。

名を月岡克弘。

元赤報隊隊士で左之助の友人。

前は絵師として活躍していたが今は新聞を作っているらしい。

月岡「あの時は世話になった。あなたが止めてくれなければ私は今頃…」

剣心「いやいや、拙者は何もしてはいないでござるよ。左之助を呼んでくるから少し…」

月岡「おお、その前に渡したいものが…」

剣心「おろ？」

袂を弄り始めた月岡を不思議に思いつつ待つ事にした。

月岡「あ、あった。これを。」

剣心「これは…？」

月岡から手渡された錦絵に描かれていたのはよく見知った人。

月岡「もうすぐ結婚すると左之に聞いたものだから。お祝いも兼ねて。」

剣心「月岡殿、かたじけないでござる。ありがたくいただくでござるよ。」

剣心は耳まで真っ赤に染め上げて礼を言った。

その錦絵に描かれていたのは日本一の芸妓、胡蝶もとい、A。

美しい着物と簪を身に纏い、こちらを黒目の勝った愛らしい瞳で見つめている。

月岡「奥方殿よりは、美しく描けなかったが。
…今度左之と三人で奥方殿について根掘り葉掘り聞くから、覚悟していろ。」

剣心「おろ。勘弁するでござるよ。」

『剣心？お客はんどすか？』

月岡「噂をすれば。」

『あら…どちら様でしょう。うち存じ上げへんわぁ。』

話の種の張本人は大きな目をパチパチさせて困ったように小首を傾げた。

月岡「左之助の友人、元絵師の月岡津南です。」

『ああ、あの有名な方ね。妙さんが好きやってゆうとりました。』

名前を聞けば顔を明るくさせ、可愛らしく手を打った。

そして左之助を呼んでくると行って奥へ下がってしまった。

剣心「…月岡殿。彼女は流石にやらぬでござるよ。」

月岡「…そこを何とか。」

デレデレしている月岡を剣心は冷ややかな目で見た。

月岡「というのは冗談だ。御両人、どうかお幸せに。」

剣心「かたじけないでござる。月岡殿。」

この後月岡から貰った錦絵を本人に見せれば、取り上げられそうになったとか。

＿＿錦絵【END】

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