【るろうに剣心】胡蝶蘭 〜京都ノ巻〜【緋村剣心】

佰拾玖 ページ21

剣心「…っここは…？」

剣心が起きたのは戦いが終わって一週間も経った日であった。

見たことのあるような広い部屋の真ん中に剣心のみが1人ポツンと横になっている。

剣心「葵屋か…」

自分の刀を枕元に見つけるとそれを手に取り、杖代わりにして立つと部屋を出ようとした。

トントン…

『剣心、お水変えて……っ！？剣心っ…！！』

久しぶりに見たその人は何も変わっていなくて、涙が出そうだった。

いつからこんなに涙脆くなったか。

歳のせいにしておく。

Aはお盆で運んだ水を落とし、剣心に勢いよく飛び込んだ。

剣心「おろぉっ！？」

剣心は突然のことに対応しきれず2人縺れて布団に転がった。

『剣心っ…良かったあ…！』

多少傷が痛むが、彼女を抱きしめていられるなら我慢できる。

剣心「世話ありがとう。心配かけて、ごめん。」

『っ…』

泣き止まない彼女の頭を撫でてやれば更に泣いた。

剣心「おろ…泣き止んで、A。君の笑った顔を見せて欲しい。」

『っうん…！』

満面の笑みで自分を見る彼女に心臓が大きく鳴る。

剣心「ただいま、A。」

『おかえりなさい、剣心。』

2人は互いに見つめ合うと、触れるだけの本当に軽い接吻をした。

『…あ、ご飯。お粥作ったの。持ってくるね。』

剣心「おろ、すまない。」

『まだ安静にしていてね。』

Aは剣心を布団に寝かせると、部屋を出た。

剣心「…やっと帰れたんだな。」

剣心の小さな独り言は部屋の空に消えていった。

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