【るろうに剣心】胡蝶蘭 〜京都ノ巻〜【緋村剣心】

佰拾捌 ページ20

薫「Aさん！」

恵「Aさん、お久しぶり。元気にしていましたか？」

『薫ちゃんに恵ちゃん…あの時は勝手に出て行ってしまってすまへんでした。』

Aはすまなそうに頭を下げた。

薫「いいのよ、そんなこと。」

恵「それよりも剣さんね、ずっと目を覚まさないの。Aさんが側にいたら起きると思うんだけど。」

『…ちょっと、様子見させてもらいますね。』

軽く一礼をすると剣心の寝ている部屋に向かった。

トントン…

『剣心？』

返事が無いのは知っていたので、そっと襖を開ける。

『…っ！』

剣心の姿は目も向けられないほど悲惨であった。

体のほとんどが包帯で包まれていて、所々から痛々しく血が滲んでいる。

傷から来た熱で息が荒い。

『剣心。』

剣心の額に冷えた自分の手を乗せてやる。

彼の熱が手のひらからじんわりと伝わってきた。

しかしなお剣心は熱でうなされている。

そんな彼に何もしてやれない自分に一番腹が立った。

でもたとえ届かなくとも、話しかけていたい。

『剣心、大丈夫よ…大丈夫。』

そう耳元で囁けば彼の荒い息は収まり、すやすやと安定した寝息を立て始めた。

すっかり暖かくなった額の右手を離し、代わりに左手を乗せる。

『剣心…起きて。またあなたの笑顔を見せて…』

じっと見つめるが何も変化は無い。

ため息をついて、彼の横に寝転んだ。

『…剣心、おかえりなさい。』

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