佰拾伍 ページ17
翌日
朝早くから剣心と斎藤は京都へ旅立つ支度をしていた。
時尾「Aさんが作ったお昼餉です。お二方で召し上がってください。」
剣心「おお、かたじけない。して、そのAは?」
時尾「寝ています。」
剣心「ははっ…やっぱり。」
斎藤「お前の嫁はどうなってるんだ。」
剣心「芸妓の時の習慣が身につき過ぎているんだ、仕方ない。」
斎藤「ほう…?」
ちょうどその時、Aが降りてきた。
まだ眠気が覚めない、零れそうな瞳でこう言う。
『…剣心。もう行っちゃうの?』
剣心「〜っ!俺やっぱり残る。」
斎藤「阿呆。」
時尾「仲がよろしい事で…」
斎藤は何時までもAを抱き締める剣心を引き剥がした。
斎藤「…すぐ帰る。」
時尾「…!はい、お待ちしてます。」
剣心「何か気持ち悪いでござる。」
ごちんっと大きな音と共に剣心の頭に大きなたんこぶができた。
***
『時尾ちゃん、絵上手やねぇ。』
時尾「本当?ありがとう。」
Aは時尾の描く桔梗を見つめてそう言った。
美しい桔梗が色鮮やかに時尾の手元に咲いている。
『…行ってしまったね。』
時尾「…そうね。」
『うちが夜出歩く時、剣心はきっとこげな感じだったんやろな。心配で心配で仕方あらへん。』
時尾は横目でAを見た。
昔から美しい娘であったが、歳をとっていても今の方が断然綺麗だと感じる。
しかしその悲しそうな顔に返事が思い浮かばず、さりげなく話題を変えた。
時尾「…芸妓のお仕事はまだやってるの?」
『ええ。』
時尾「へえ…きっとお客さんいっぱいなんだろうね。」
『ううん、そんな事あらへんよ。幕末に比べたら全然。』
時尾「Aさんは、美人だからね。」
『またまた、褒めたって何も出えへんよ。』
いくら笑ってもその奥に感じる悲しみは隠しきれない。
時尾「(無理もないわ。緋村さんは遠出なんて滅多にしないし。)」
彼女のそれは自分に消せるはずもなく、見て見ぬ振りをするしかない。
無力な自分の心の奥がズキリと痛んだ。
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kei - 柚姫さんのるろ剣作品、令和になって一気読みしました!!令和版アニメも始まって再ハマりで笑。全作品キュンでありがとう…ほんっとに素敵なものばかりでした!!見入ってしまい本当に楽しかったしキュンしたし出会えてよかった!!また別作品も読ませて頂きますね (8月24日 22時) (レス) @page38 id: 0ea605babb (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみん - キャア、けんしんたら、子供がほしいのかあ、続き楽しみにしてます (2019年6月4日 21時) (レス) id: bf7cef9bae (このIDを非表示/違反報告)
柚姫 - ミッピーさん» 読んでいただいてありがとうございました!!!るろうに剣心夢小説少ないですよね。。私はほぼ自己満足で書いてます笑笑是非他の作品も見てやってくださると有難いです。。!!! (2018年1月14日 1時) (レス) id: 4c2d183821 (このIDを非表示/違反報告)
ミッピー(プロフ) - 最高でした!!るろ剣の夢ってあんまし需要ないんですかね??探してもそんなに沢山出てこない(><)好きなのがマイナー多めと言う切なさww (2018年1月6日 0時) (レス) id: a91870086a (このIDを非表示/違反報告)
柚姫 - コメントありがとうございます!そう言ってもらえると、とっても嬉しいです! (2016年10月20日 0時) (レス) id: 3ebe891132 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:柚姫 | 作成日時:2016年9月26日 18時