一杯目 ページ1
「ああ、疲れた…」
やっと終わった課題。
手を付けなかった私が悪いのだけど。
気付けば日も傾いている。
早く帰ろう。
いつもと変わらない道を歩く。
ふと、気付く。
いつもはしないコーヒーの香り。
疑問に思い香りの方へ足を向ける。
そこには手書きで「stella cattus」と書かれていた。
ドアを開けると漂うコーヒーの香り。
淹れているのはカフェオレ色の髪から同じ色の猫の耳が生えた男の子。
「ん、いらっしゃい。」
「あ…えっと…」
「座って。」
言われるがまま座る。
「君、初めてでしょ。ここ来るの。」
「はい。」
こちらと目を合わせない。
店内のスピーカーから聞きなじんだ音楽が聞こえる。
「一杯サービス。」
コトン、という音と共に藍色のマグカップが出てくる。
「砂糖とミルクはそこ。」
「はい。」
砂糖を入れてからからと混ぜる。
一口啜ると優しい甘さが口内に広がる。
「美味しい…」
「どうも。」
「…あの。」
意を決して声をかける。
「何。」
「今の曲って…」
「知ってんの?」
やっとこっちを向いた。
「はい。」
「俺もこれ好きなんだよ。それでさ。」
「はい?」
「疲れてんでしょ。」
「え?」
「勉強とか。」
ドンピシャだ。
「まあここはそういう人がよく来るんだけど。俺は店長のリュウ。よろしく。」
「あ、Aです。」
「おう。…A、お疲れ様。」
「あ、ありがとうございます。」
赤い吊り上がった目が優しく細められた。
「あの、また明日も来ていいですか?」
「来なよ。待ってるから。」
そして店を出た私は帰路に着いた。
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