大切な毎日 10 (ページ17)

今日:34 hit、昨日:45 hit、合計:16,760 hit

… ページ17

和也「パパ…これ、買ったあかん…？」

ほらぁ、言わんこっちゃない！
まあ、こうなるって分かってたのに中入れた俺も悪いか…

大吾「あかんよ。今日は買わんって言うたやん」

和也「でも…」

大吾「和也。お約束したはずやで？今日は見るだけ。」

和也「……」

和也は、眉毛下げてしんみりした顔でおもちゃを
ぎゅっ…て抱えてる。

喋らへんけど、目線だけでの『あかん？』攻撃に
その後もずっと首振り続けた。

大吾「そういう大きいおもちゃは、誕生日かクリスマスにしか買わへんよ。ほんなら今年の誕生日はこのおもちゃにしよか？」

和也「…うん…」

大吾「分かった、約束な。
じゃあそれは和也の誕生日にまた買いに来よ。」

和也「…はぁい…」

全然納得はいってへん様子やったけど、
ちゃんとおもちゃを元の場所に戻した和也。

よしよし、偉い偉い…
今日はえらいスムーズに行く日やな。よかったわ。

早くクレープで機嫌直してもらおうと思ってたその時、

『あったー！これ！これが欲しいねん！』

和也と同い年くらいのよその男の子が、バタバタ隣にやってきて。
ほんなら、和也がさっき戻したおもちゃを手に取って親御さんに見せてた。

その後の会話とかを聞いてる限り、
その子は誕生日プレゼントを買いに来たっぽくて…

最近誕生日やったんかな、それともこの後なんかな。
完全に他人やからそこらへんの事情は知らんけど、
楽しそうにウキウキしながらおもちゃを手に取ってる姿はよその子とは言うても子供らしくて可愛ええ。

うちははよ店出んと…って思って和也の手ぇ握って
店から出ようとしたら、和也は全然動かへん。

グイグイ引っ張っても、和也は体固くしてずっとその場にとどまっとる。

大吾「…和也？」

和也「……れも…」

大吾「え？」

和也「〜っおれも！！」

いきなり、店中響き渡るくらいのおっきい声で和也が叫んだ。
和也の目にはほんのり涙が溜まってて、
口もキュッとへの字で…
自分の服の裾を、弱気そうに握っとる。

和也の声に、近くにいた店員さんも周りのお客さんもこっちに注目してきた。

大吾「ちょ、声おっき…」

和也「おれも……っおれも、ほしい！かってや！！」

大吾「だから言うたやん、今日はお誕生日でもクリスマスでも無いんやから買わな…」

和也「なんでぇ…！っずるい、おれもほしい〜！
きょおほしい！いまほしい〜！」

我慢が爆発したみたいに、和也は俺の手ぇグイグイ引っ張って駄々こねる。