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中原中也にとって、 ページ4

中原中也は、マキマの事を実の姉の様に慕っている。こんな事を本人の目の前で云うのはなんだか照れ臭くて、云った事はないのだが。

 マキマは中也にいろんな事を教えてくれた。『パン』の存在すら知らなかった中也を怪訝に思う事なく、菓子パン、惣菜パンなどのいろんな種類のパンを与えてくれた。食パンにはジャムを付けて食べると美味しいのも知れた。
 パンに飽きてくれば、その他の食べ物を教えてくれた。「本当はダメなんなけどね」と云いつつ、他の《羊》の構成員の様に酒も飲ませてくれた。因みに中也は直ぐに酔い潰れた。
 汚れた身体を綺麗に洗ってくれた。それに合わせて、綺麗で清潔な服と靴を見繕ってくれた。
 あまりにも外の世界を知らなさすぎる中也に、いろんな事を教えてくれたのはマキマだった。

 中原中也にとってのマキマは、実の姉だと云っても過言ではない。其れは他の構成員も思っていた事だ。
「年は同じくらいだと思うんだけどな」
「いいじゃんか。髪色も似た様な色だし。最初の数週間、いつもマキマの後ろをひょこひょこついて行ってたのも弟っぽかったよ」
 マキマが首を傾げていると、白瀬がそう云った。周りの構成員も笑った。
 何時もの橋の下。皆が酒を片手に談笑している。ふと誰かが云った「マキマと中也って、本物の姉弟っぽいよな」と云う言葉で、其の話題がずっと続いている。
 最初の頃はなんとか話題を逸らそうとしていた中也は、既に酒に酔ってマキマの肩に自分の頭を乗せて眠っていた。

 「まあ……。私も今では中原君の事を、本当の弟の様に思ってるんだけどね」
 真逆、推しにこんな感情を抱く日が来るとは。
 そう呟いた声は、周りの笑い声に掻き消されて誰の耳にも届かなかった。



 「今死ぬか、情報を吐いてから死ぬか。好きな方を選びな」
「その二択、いいね。心そそられる」
 太宰治は平坦な声のまま、中也に云った。
「じゃ今殺せ」
 
 中也と太宰の邂逅を近くで見守っていた数羽の鳥は、其の言葉を聞くと飛び去っていった。



 「……《羊》にこの儘残っていても、最終的に組織を解体された後に横浜から追い出されちゃうかもしれないし……。そうなると皆の活躍をこの目で見れなくなっちゃうからね。抜けるのなら、中原君が太宰君と接触した今、かな」
 二人の会話を聞いていたマキマは、今後の自分の立ち回りを考えて《羊》を抜ける事にした。

 其の日、中也以外の《羊》の構成員は、マキマの存在を完全に忘れた。

覚えてない、思い出せない→←何故か、思い込んでいる



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はたりり(プロフ) - 面白くてここまで一気に読んじゃいました!!続きってありますか?楽しく待ってます! (12月5日 20時) (レス) @page12 id: 08a8bb82bf (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 猫さん» コメント有難う御座います! 長い間更新できないでいて本当に申し訳ないです。 (2023年4月10日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続き待ってました!!!更新ありがとうございます!!応援してます! (2023年3月20日 7時) (レス) @page12 id: 846f3d2d4a (このIDを非表示/違反報告)
琉亜 - て (2023年2月24日 3時) (レス) id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
琉亜 - あ (2023年2月24日 2時) (レス) @page11 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月13日 6時

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