出会いと勧誘 ページ2
赭色の髪をした少年は、フラフラとした足取りで街を歩いていた。其の少年はボロボロの軍服を纏い、全身は汚れていて、靴も履いていなかった。少年の歩いている街の様子も、少年と同じ様にボロボロだった。
歩いて歩いて、何処まで歩き続けたのか判らない。そんな時だ。
「──見つけた」
朦朧としかけている意識の中で、少年は確かに聞いた。少女の、柔らかな声を。なんの根拠もなかったが、それは自分に向けられた声だと確信していた。
キョロキョロと辺りを見渡して、数メートル程後ろの方に少女の姿を見つけた。
少年と似た、赤毛の髪をした少女だ。其の瞳は黄金色で、赤の円状の線が二重にも、三重にも渦巻いていた。
少女は柔らかな笑みを口元に貼り付けて、もう一度「見つけた」と云った。
＊
「私はマキマ。君を私の所属する組織──《羊》に勧誘しに来たんだ」
「……勧誘」
「うん」と頷いたマキマは少年の名前を尋ねたが、彼は答えない。名前を答えない少年の代わりに、彼の腹が鳴って大きく返事をした。
「……お腹が空いてるんだね。取り敢えず付いておいで。丁度白瀬君達が何時もの橋の下で食パンを食べてたから、分けてもらおう」
少年はマキマの云う『パン』とやらが何か判らなかったが、話の内容的に食べ物である事は理解できた。
「歩ける？」
少年はマキマに付いていくだなんて一言も云ってないが、彼女にとって自分を連れていくのはもう決定事項になっているらしい。
まあ、佳いか。
少年は歩き出そうと一歩踏み出したが、力が入らずに倒れそうになる。其れをマキマが抱き止めた。
「おっと。危なかったね」
しかし、少年は何時迄経ってもマキマに抱き止められたままでいる。
マキマが不思議がって少年の顔を覗き込むと、彼は目を閉じていた。安心感か、将又別の感覚からか、彼は気を失っていた。
マキマは抱き止めた少年の頭に、自分の頰を擦り寄せた。嬉しかったのだ。少年──中原中也に会えた事が。
「君はこれから《羊》の構成員になって、《羊の王》と呼ばれる様になる」
マキマ──否、彼女に成り代わった少女は、楽しみで仕方がないと云う様な笑みを溢す。
「これからが楽しみだなぁ。疾く皆の活躍が見たい」
成り代わった彼女がこの時点で中也に抱いている感情は、所詮『推しに出会えて嬉しい』だとか、そんなものだ。
しかし彼女は知らない。後に彼と本物の家族愛を育み、彼の嫌う事になる男と、友情を育む事など。
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はたりり(プロフ) - 面白くてここまで一気に読んじゃいました！！続きってありますか？楽しく待ってます！ (12月5日 20時) (
レス) @page12 id: 08a8bb82bf (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 猫さん» コメント有難う御座います！ 長い間更新できないでいて本当に申し訳ないです。 (2023年4月10日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 続き待ってました！！！更新ありがとうございます！！応援してます！ (2023年3月20日 7時) (レス) @page12 id: 846f3d2d4a (このIDを非表示/違反報告)
琉亜 - て (2023年2月24日 3時) (レス) id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
琉亜 - あ (2023年2月24日 2時) (レス) @page11 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：息抜き | 作成日時：2022年11月13日 6時
