飲み屋にて 一 ページ9
「もう一回言うで。君みたいな子供が一人で出歩いて佳い時間帯じゃない」
種田は赤毛の少女に歩み寄り、嗜める様にしてもう一度語りかけた。しかし少女は口元の笑みを其の儘に、首を傾げるだけ。
「はぁ、何の用かは知らんが……迷子か?」
「いいえ」
彼女は腕を後ろに組んで話し始める。
「先程も云った様に、貴方に話があって来ました。内務省異能特務課の最高指揮官、種田山頭火さん」
「……お嬢ちゃん、場所を移すぞ」
*
元々訪れる予定だった飲み屋に場所を移り、いつもの様に酒と、軽く摘みを注文する。そして、マキマにも軽食程度に少量の唐揚げとポテトサラダ、そして出汁巻き卵を注文した。
「……お構いなく」
マキマは自分の目の前に並べられた皿を見てそう云ったが、種田は何も答えずに猪口に酒を注いで其れを飲み始める。彼女は遠慮なく箸を取ると唐揚げを一つ口に放り込み、次いで出汁巻き玉を箸で割った。
やがてマキマがある程度は完食した頃に、種田は喋り出した。
「異能特務化は表向きには存在しない組織。要するに秘密組織や。如何やって情報を得た?」
「大抵の事は、調べれば判ります」
マキマは箸を置いて手を膝にやる。種田はなくなった酒のお代わりを頼んだ後に「用件は?」と問いかけた。
「私はマキマ。支配の悪魔です。貴方と個人的に契約……と云うか、約束の様な物を結びにきました」
「……厨二病って云う奴か? 付き合ってられんわ」
「一般人から見れば、異能力も充分厨二病の対象だと思いますが」
た、確かに……。
種田は其れに妙に納得して、二、三度頷いた。
*
「で、君が支配の悪魔とやらを名乗っているのと異能力とは全くの無関係か?」
種田はじっと見つめてくる彼女の特徴的な瞳を見ながら聞いた。
「そうですね……」と首を傾げたマキマだったが、数秒後には「貴方の場合は、実践した理解が早いでしょう」と、種田の目の前に置かれている皿や酒を自分の方へと移動させた。
「おい」と云う若干狼狽えた彼の声を気に留めず、皿を引き寄せた手の人差し指で其の儘トントンと机を二回叩く。
「伏せ」
「ッ──!?」
ガッと鈍い音がして、種田は机の上に伏せた。店員がカウンターの方から何事かと顔を覗かせたが、種田をただの酔っ払いと思い込んだのか直ぐに奥へ引っ込んだ。
だが種田は其れを気にする事もなく、視線だけをマキマの方へと動かした。
「異能じゃないな、君の其れ」
「其の通りです」
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はたりり(プロフ) - 面白くてここまで一気に読んじゃいました!!続きってありますか?楽しく待ってます! (12月5日 20時) (レス) @page12 id: 08a8bb82bf (このIDを非表示/違反報告)
息抜き(プロフ) - 猫さん» コメント有難う御座います! 長い間更新できないでいて本当に申し訳ないです。 (2023年4月10日 22時) (レス) id: aff75be4a1 (このIDを非表示/違反報告)
猫(プロフ) - 続き待ってました!!!更新ありがとうございます!!応援してます! (2023年3月20日 7時) (レス) @page12 id: 846f3d2d4a (このIDを非表示/違反報告)
琉亜 - て (2023年2月24日 3時) (レス) id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
琉亜 - あ (2023年2月24日 2時) (レス) @page11 id: 5309fc8273 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:息抜き | 作成日時:2022年11月13日 6時