Episode5 -3 ページ31
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櫻井くんが口を閉ざしてしまったので、私は再び手元の栞に視線を落とす。
どれだけ見つめたって栞が何かを言うわけじゃないけれど。
頭の片隅に何かが引っ掛かっているようなそんな気がしていた。
「……何もってんの」
「え？」
「それ、俺が作ってやったカクテルそっちのけでなに見つめてるわけ」
「あぁ…これは栞だけど……見る？」
珍しく興味をひかれたらしい櫻井くんに見えるように栞を掲げる。
「指輪？」
「そう指輪。花指輪の押し花」
「へー……そんなもん、まだ持ってんのかよ……」
「え、今何か言った？」
「そんな古そうなものまだ持ってんのかって言ったんだよ」
櫻井くんがぼそりといった言葉が聞き取れなくて聞き返すと、そんな言葉が返ってきた。
まったく口が悪いんだから。
だけどこの言葉遣いにもすっかり慣れてしまって、最近は前よりもスムーズに会話が出来てると思う。
特にブランデーエッグノッグを作ってくれた夜から、少しだけ櫻井くんの雰囲気が柔らかくなった気がする。
気のせいかな？
「そうだよね、やっぱ古いよね……」
「はぁ？」
「ううん、こっちの話」
「………ところで指輪なんて誰にもらったの」
「それが思い出せなくて、今考えてるところなの」
「あっそ」
うーん、やっぱり何も思い出せない。
はぁ…とため息をついてカクテルに口を付ける。
甘酸っぱい香りを楽しみながら、ふと頭に疑問が浮かんだ。
「あれ……？」
「急になに」
「櫻井くん、どうしてこの指輪が貰い物だって知ってるの？」
「え？」
「それだけじゃない……どうして私がもらったのが指輪だけだって知ってるの…？」
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
