Episode4 -7 ページ26
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誰だったのかはわからないけれど、水の奥底から泡が上がってきてパチンとはじけたように、幼い記憶が脳裏によみがえった。
「その言葉を聞くのは二度目だ」
私の言葉を聞いたおばあさんがそう言って愉快そうに笑った。
「二度目…なんですか？」
「ああ。同じことを言った坊やがいたよ」
「同じ、ことを」
「坊やと言っても、二十歳くらいだったがねぇ。この店に迷い込むのは魔法がどうしても必要な人間だけだからね。前回迷い込んできたのはその坊やだ。二年位前だったかね」
「そうなんですか…」
私と同じことを言った男の子。
それはとても気になる存在だ。
記憶の中で私にそう言った男の子の顔はまだ思い出せていない。
いつものように白いもやがかかっていて、誰なのかがわからない。
あぁ、もどかしい。
何か思い出せそうな気がするのに。
「その坊やは願いが最初から決まっていたみたいでね。生者は殺せない、死者は蘇らないと言ったら、聞いてきたんだよ。記憶は消せるのかって」
「！」
記憶が消せる…！
その可能性は考えていなかった。
もし、もしも。
このキャンディで記憶が消せるとしたら。
その逆もできるんじゃないだろうか。
「……それで、消せるんですか？」
「あぁ、消せるさ。対象者一人に限るがね」
「っ！」
やった。
これで私も記憶を取り戻せるかもしれない。
手元のキャンディをじっと見つめる。
キャンディはこちらの気も知らずただ静かに瓶の中でこちらを見ていた。
「あの、ちなみにその人の名前ってわかります？」
私と同じことを言ったという男の子、私の記憶を調べるのならその子に会うのは価値があるかもしれない。
そう思ったのだけど。
「残念だが、そこまではわからないさ」
「そうですか…」
「どうしてもというなら、そのキャンディにお願いするんだね」
おばあさんが顎で小瓶を示す。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
