Episode4 -5 ページ24
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「すみませーん……」
そぉ…っと中を覗き込んでみたけど店員さんは見当たらなくて、仕方なく店の奥へと向かう。
鏡とかオルゴールみたいな箱とかネックレスとか雑多なものが並ぶ決して広くはない店内を奥に進むと、丸い腰高のテーブルの上に小さな小瓶に入った黄色い包み紙のキャンディを見つけた。
一つだけ周りと隔絶された雰囲気を持つそれが妙に気になって、無意識のうちに手を伸ばす。
私の手が小瓶のコルクに触れたその時、
「おや、珍しいお客さんだね」
「！」
背中から声をかけられた。
飛び上がらんばかりに驚いて後ろを振り向くと、紫色のフードをかぶったおばあさんがそこにいた。
マントから覗く瞳が優しい温かさを宿していることに気が付いて、私は跳ね上がった心臓を落ち着かせるように何度か深呼吸。
「ごめんなさい、勝手に入ってしまって」
「いいんだよ。ここはあんたみたいなのが来るために開いてる店だからね」
「あんたみたいなの……？」
「そうさ。ここにあるものが本当に必要な人間だけがここにたどり着く。なにか悩んでるだろう」
おばあさんは棚に置いてあった商品らしいマグカップを二つ取ると、そばに置いてあったケトルの中身を注ぎ入れる。
そのとたんにふんわりと香った紅茶の匂いに私は固まっていた頬を緩めた。
「砂糖は何杯だい？」
「あ、二杯で」
「ほら、座って飲みな。外は寒かっただろう」
キャンディの小瓶が乗ったテーブルのそばに椅子を持ってきたおばあさんは私の前に湯気の上った紅茶を置いてくれた。
いわれるがまま椅子に座って紅茶に口を付ける。
今までに飲んだことのない紅茶の味がした。
甘くて温かくて。
「美味しい」
「そりゃよかった」
おばあさんが笑った。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年1月24日 21時
