Episode15 -6 ページ16
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「それなら翔はずっと、あの時から私のものでしょう？ずっとね、翔が好きだよ。……ううん…それは少し違う。私ね、櫻井くんのことが好きだったんだよ。翔のこと忘れてても、私は翔のことを好きになるしかなかったの」
「櫻井くん…って……あんな態度も口も悪かったのに…」
「でも、優しかった」
「っ」
「私にはずっと、優しかったの」
翔が私にだけはいつだって優しかったように。
言葉や態度がどれだけ冷たくても、櫻井くんはいつも優しい人だった。
優しさを持った、温かい人だった。
「翔が一緒じゃなきゃ、私笑えないよ。それでもいいの」
目をまっすぐ見つめてそう問いかける私に、翔が凛々しい眉を困り果てたように下げた。
「お前……ずりぃよ、それ……俺の願いはお前が笑ってることだけなんだよ、それなのに…」
「ふふ、そうだよ、私ずるいの」
満面笑みで笑ってやったら翔がその口元を歪ませた。
顔が海の方へと逃げていく。
泣きそうに揺れる翔の大きな目にはこの海の先に点る誰かの日常がどんなふうに映るだろうか。
その目はやがて一筋だけこらえきれずに雫を溢した。
それを乱暴に袖で拭うと、翔は体を起こす。
すぐそばまで顔を近づけて私の手に自分の手を重ねる。
翔の手は、小さく震えていた。
もしもそれが雨にぬれた寒さのせいだというのなら、温めてあげたくてその手にさらに自分の手を重ね合わせる。
「……俺は、人殺しだよ？」
「知ってる……でも、私のためでしょ」
「……金も、人脈もないよ？」
「そんなものいらない。翔さえいれば」
「………きっと俺は、お前を幸せにはできないよ」
「別にいいよ。私があなたをしあわせにするから」
言いたいことはきっとそれだけ。
私が翔を幸せにするから。
「翔が幸せなら、私は幸せだよ」
好きな人の幸せは誰にとっても幸せでしょう。
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iCHiKA(プロフ) - 櫻宮さん» コメントありがとうございます。切なさと温かさの両立は目指したところでございますのでそう言っていただけて嬉しいです！最後まで彼らの物語をお読みいただきありがとうございました。 (2020年6月30日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮 - 翔は主人公ちゃんを思って記憶を消そうとした。でもそれを主人公ちゃんが許さなかった。切なくてとても温かいお話でした。凄く感動しました！！ (2020年6月29日 16時) (レス) id: 95d5f07b44 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - ともさん» とも様、いつもありがとうございます。切なさと隣り合わせに温もりを失くさないことを目指して書いておりましたのでそう言っていただけて大変光栄です。最後までお読みいただきありがとうございました。 (2020年4月15日 23時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 完結…お疲れ様でした。ファンタジーな世界で切ない中にも心が温まるお話でした。夢中で拝読させて頂きました。 (2020年4月14日 18時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年3月23日 14時
