Episode15 -4 ページ14
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それは例えば相葉さんが睡眠薬を私のグラスに入れたこととか、ねがいごとキャンディなんて魔法の存在を知っていることとかが該当するんだろうか。
「あの日だってホントは、お前に雅紀がお前の探してる相手だって思ってもらうことが狙いだった。その間にキャンディを奪ってしまえばお前は俺のことを思い出さない。それでよかったんだ。そうすれば何事もなく、お前は何も知らずに笑っていられる……はず、だったのに」
翔の大きな目が睨むようにこちらを向く。
私から見たって大きな瞳は、翔の感情すらわからないくらい夜の色だけに染められていた。
早く、月が出てくれなければ、そんな翔の表情すら逃してしまう。
「雅紀のやつがためらったりするから……」
「翔…」
文句のように吐き出したわりに翔の声にはあきらめのようなものがうかがえた。
暗くてしっかりとは表情がわからなくても、声とは意外なほどに雄弁だ。
「でも、雅紀がそうしてくれなかったら今頃、俺は変わらずにKIWIのカウンターの中からお前を見てたんだよな。ただのバーテンと、客として」
いつもちょっと不機嫌そうに私たちを見ていた櫻井くんの表情を思い出す。
それは確かに、ただのバーテンダーとお客さん、というものに違いなかっただろう。
それはそう簡単には変わらない関係性だ。
「それでよかったんだよ。お前が笑って食って飲んで、会社の仲間としゃべって、そうやって普通に暮らしてるところをほんの少し見られるだけでよかった。俺はそれだけで十分、じゅうぶんだったんだ」
言葉を重ねた翔はふいに口を閉ざす。
その唇がわずかに震えているのがわかったのは、ようやく月がその片鱗を灰色の雲からのぞかせたからだった。
「……でも、お前が、俺の名前を呼ぶから」
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iCHiKA(プロフ) - 櫻宮さん» コメントありがとうございます。切なさと温かさの両立は目指したところでございますのでそう言っていただけて嬉しいです！最後まで彼らの物語をお読みいただきありがとうございました。 (2020年6月30日 20時) (
レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
櫻宮 - 翔は主人公ちゃんを思って記憶を消そうとした。でもそれを主人公ちゃんが許さなかった。切なくてとても温かいお話でした。凄く感動しました！！ (2020年6月29日 16時) (レス) id: 95d5f07b44 (このIDを非表示/違反報告)
iCHiKA(プロフ) - ともさん» とも様、いつもありがとうございます。切なさと隣り合わせに温もりを失くさないことを目指して書いておりましたのでそう言っていただけて大変光栄です。最後までお読みいただきありがとうございました。 (2020年4月15日 23時) (レス) id: ca4476f6fd (このIDを非表示/違反報告)
とも(プロフ) - 完結…お疲れ様でした。ファンタジーな世界で切ない中にも心が温まるお話でした。夢中で拝読させて頂きました。 (2020年4月14日 18時) (レス) id: bd0ebe94fc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年3月23日 14時
