Episode9 -11 ページ19
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翔に促されるまま部屋に入ると、シングルサイズのベッドに見覚えのあるクッションが置いてあるのに気が付いた。
「あ、これ…」
懐かしくて手に取ると、後ろから翔の「隠しとくんだった…」というつぶやきが聞こえた。
昔翔の誕生日に私があげたものだ。
もちもちした感触のドーナツ型クッション。
ふにふにと懐かしい感触を確かめながら頬が緩んでいくのがわかった。
これ、私も同じもの持ってたけど、翔の家に泊まるときには翔のを借りてたんだよね。
「ふふ、懐かしい」
「はいはい。懐かしいのはわかったから、ベッドに入れ」
「……ほんとにここで寝なきゃダメ？」
「ああ？」
「ごめんなさいなんでもないです」
翔の大きな目で睨まれて素直にベッドに入る。
お邪魔します、と翔には聞こえないように口の中だけでつぶやいた。
当たり前のことだけど、ベッドに入ると翔の香りに包まれた。
懐かしくて落ち着く、けれどドキドキする香り。
ドキドキしてるのが翔に気づかれないかとさらにドキドキしながら掛布団を引き上げる。
そんな私の横で翔はサイドテーブルのスタンドを点けると椅子を引っ張ってきてそこに座った。
「翔は寝ないの？」
「なに、一緒に寝たいの？」
「っ、そうは言ってない！」
一気に頬が熱をもって隠すように布団をさらに引き上げる。
翔の笑う声が聞こえた。
「一緒には寝ないよ。何もしたくないし」
「……なにかするの？」
「こっちの話。それともキスくらいしてほしい？」
「お、お断りします！」
「なんだざんねん」
ちっとも残念じゃなさそうに翔が笑いながら枕もとの電気を絞る。
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作者名：iCHiKA
| 作成日時：2020年2月6日 21時
