【文豪ストレイドッグス】巷で噂の仕立て屋は +生地を裁って+

針仕事　珀肆　対談*side探偵社 ページ4

応接室に向かい合って座ったは良いものの、「半径三米以内に入るな」と云われ渋々距離を取っている。じゃないと今すぐ出て行くって脅すんだもん。念のため簪は預かったけども、“彼”ならあまり意味は無いのかもしれない。

「却説、何処から何処まで聞いて良いかな？」
「“俺”だって暇じゃァねぇんだ。くだらん質問だったら帰るからな」

何処ぞの蛞蝓のような目つきをして、豪快に脚を組んでいる玉乃衣ちゃん改め“繍”という人間。

「では先ず、“君”について教えて欲しい」
「…………チッ」
「わぁ嫌そう」
「ったりめェだ」

盛大な舌打ちと共に、質問に答えるべく口を開いてくれる。

「“俺”は“玉乃衣A”の別の人格ッて云えばそうだし、寄生していると云われても否定はしない。“俺”自身、いつ生まれていつから“俺”を認識して、入れ替わってたかは曖昧なもんでね」
「そこら辺はご両親に聞いてみるよ」
「無駄だ。“俺”は親の前には出た記憶が無い。つまり、親は知らない」

「玉乃衣ちゃんの異能力として寄生している人格、だろう？そこの話を詳しく聞きたいな」
「詳しくも何も、まんまの意味。言い換えるンなら異能生命体みたいなモンだね」
「鏡花ちゃんの【夜叉白雪】みたいなものか……否、敦君の【月下獣】に近いのか」
「知らん」

えぇ……

「じゃあ、如何いう能力だい？君が異能力の類いなら、私が触れたら玉乃衣ちゃんに戻るって事？」
「説明がすこぶる面倒臭い」

これじゃあ話が続かない。私は嫌われているみたいだけども、聞き出すのは得意だからと名乗り上げたのに。
“彼”も面倒臭いと云うより、隠したがっているような気もする。隠したい程に凄い能力なのか……？

「では、“君”の身体に直接訪ねてみようか？」
「おっと。三米以内に近付くなって云わなかったっけ？」
「守ると思う？」
「扉前に引っ付いてる奴等呼び出すぞ」

それは困るな。あまり面白いものではないから。

「“君”が教えてくれるのなら、私は此処から一歩も動かないと誓うよ」
「云ったな？」

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