【文豪スレイドッグス】巷で噂の仕立て屋は (ページ18)

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針仕事　拾捌　凄い人side*探偵社ページ18

「玉乃衣さん」
「あら、敦さん。こんにちは」

仕事服の袴姿で、銀髪は簪で留めてある。この前社長に連れて来られた時は雰囲気からして物凄く近寄りがたい人だと思ったけど、話してみると案外雰囲気の柔らかい人だって知れた。

「そうです。敦さん、少しお時間よろしいですか？」
「え？あ、はい、大丈夫ですよ」
「よかった。背広の生地がいくつか入ったので見ていただきたくって」

どうぞ、と中に通され、前とは別の作業部屋らしきところに通された。
少々お待ちください、と玉乃衣さんがいくつか布を運んできた。細いのにそんなに持って大丈夫かな……

「申し訳ありません、なかなか絞れなくって……私の悪い癖でございます」
「そ、そんな！こんなに考えてくれるなんて……」
「さ、お好きな色、柄をお選びくださいませ。私はこちらで完成図を絞っておきますので」

完成図って、つまり出来上がりの事だよな……？

「それって、玉乃衣さんが考えてるんですか？」
「？はい」

凄いことだ。一人で切り盛りしてるとは云え、何でも一人でやってるってことだ。

「邪魔するぞ」
「はーい」

刹那、玉乃衣さんの悲鳴と、何かが壊れる音。慌てて飛び出すと、黒い塊に捕らわれている玉乃衣さんがいた。

「何故、人虎がここに居る」
「芥川……！」

ポートマフィアの芥川が、【羅生門】で玉乃衣さんを捕らえていた。何故、こんなことを。

「玉乃衣さんを放せ！」
「黙れ。僕はこいつに話がある」
「ぐぅ……芥川様、痛い……痛いです！」
「黙れ。質問に答えろ」

質問に答える前に、玉乃衣さんが殺される。ダメだ、玉乃衣さんに死んでほしくない。

「勘違いするな、人虎。僕はこいつを殺さない。質問に答えてもらうだけだ」
「信じられるか！」