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俺は苦悩していた。
病院に着いたはいいがそういえば山田といのちゃんの病室は別であり、何なら階すら違うのだ。
先ほどまでと同じであればいのちゃんの方の病室にいるだろうが移動している可能性だってかなりある。
俺が部屋を出た後、山田の顔を見にいったかもしれない。

様々な可能性を考えた上で五階へと向かう事にした。
もし、俺の考えが正しければ彼らはそこにいると信じて。
違っていたとしても怒られない程度にダッシュしてもう片方に向かえば差したる問題ではなくなる。

数時間前に乗ったエレベーターに乗り込み数字を押す。
ゆったりと動き出すこの箱に数時間前同様しばしの苛立ちを感じる。
下手すれば階段全力ダッシュしたほうが早かったかもしれない。
もしそれを実行したのなら俺の足が翌日動かなくなることだけは確かであろう。

そんな考えはさておき、短い到着音と共にドアが開いた。
全部開き切る前にそれを押し除けて廊下を突き進む。
番号と氏名を確認してノックを数回。中から声が聞こえたのを確認してドアを開ける。

そこにいたのは先ほどあったメンバー三人と、仕事終わりであろう二人の計五人の姿であった。
ベットを囲むようにして椅子に腰掛ける俺の大切な人たちの表情は優れないまま。
仄かに笑いかけてくれる彼らの顔に微かな影が落ちていたのは気のせいでないだろう。

薮くんからの手招きを受けて一つ空いていた椅子を手に取る。
眠る山田を中心として全員が顔を突き合わせる形をとった。
やはり俺の予想は正しかったらしく、目覚めるのが早そうな方に集結していたようだ。

俺が椅子に腰掛けたのを見て徐に薮くんの口が開く。

「大ちゃんも来た事だし、とりあえず聞いた事報告するわ。」

彼の言葉を区切りに全員の顔つきが変わった。
まるで覚悟を決めたような。そんな感じである。

最年長の口から紡がれる言葉は耳を塞ぎたくなるようなものだった。

いのちゃんは出血が酷く目覚めるまでに時間がかかること。
轢かれた時に左腕が折れてしまったこと。
頭を強打していること。

山田はいのちゃんと違い轢かれていないがいのちゃんと同様頭を強く打っていること。
その際に擦り傷といった細かな外傷が見られること。

段々と話すトーンが落ちていき雰囲気が重くなる。
はなから明るい内容でないことは重々承知していたのにここまでとは思わなかった。
後遺症については目覚めてからの検査次第だといった。
沈黙を無視できたのは機械からの電子音のみだった。

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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

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