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何もかも俺の勘違いだったんだ。
犯罪紛いの事をしたわけじゃなくてただ純粋に俺を助けようとしてくれて。自分のことを後回しにする人だから。怪我とかを顧みず助けてくれたのに、俺はすごい物言いをかましたのだ。そりゃあんな表情もするだろう。
「ちゃん!!山田!!」
駆け寄ってくる大ちゃん。彼もまた無事だったようだ。
ドサっと俺の胸に何かが落ちてくる。
脱力し、腕で支えられなくなった体がそのまま自然落下したのだ。
ゆっくりと体を起こし大ちゃんと協力して伊野尾ちゃんを抱え上げる。
俺に怪我という怪我は特にないが彼は一部範囲内に取り残されその部分が衝撃の強さをありありと俺たちに明示していた。
俺の頭の下に敷かれていた方の彼の綺麗な白い手はアスファルトに擦り付けたため真っ赤に荒れていた。
意識を飛ばし眠るその姿はどこまでも綺麗で儚げで。雨を受け滴る様子は映画のワンシーンのようだった。
救急に連絡を入れ薮ちゃんたちに報告を入れ。次々に行動する俺たちと対照的に周囲の歩行者はその足を止める者の方が多かった。
ある者はスマホを構え、ある者は『あれやばくね?』と声だけを漏らし。トラックの運転手に至っては逃亡を決め込み罪から逃れようとしていた。
側から見れば俺たちの姿は滑稽で芸能人が轢かれたともなれば美味いネタにでもなるだろう。しかし、そいつらに俺らを侮辱する権利などないのだ。
いじめの場において傍観者の方が多いていう理由がよくわかる。
数分も経たないうちに傘を持ち不安そうな表情で雄也が来てくれた。
「大丈夫、ではないね。山田と有岡くんの怪我は?」
「俺は大丈夫。ちょっと擦っただけ。大したことない。」
「俺も。大丈夫。伊野尾ちゃんが守ってくれたから。」
「そっか。とりあえず二人が無事でよかった。」
不意に遠くを見据えたと思えば高木の視線の先に赤いランプが見える。
それは先刻のように獰猛で人を傷つけるものではなく、たった一つの命のために日々走り回る勇敢なものであった。
今俺は大ちゃんと二人で車に乗っている。
マネが法定速度ギリギリで回してくれているのだ。後部座席に乗る俺たちの席の間には高木が持ってきてくれた傘が用を忘れて置かれていた。
あの後、付添人として同行した雄也。
本当は俺か大ちゃんが行くべきだったのだろうがどうしても声をあげれず気を利かせて雄也が同行してくれた。
不甲斐なさと心配を汲み取り、彼は朗らかに笑って大丈夫、と言ってくれた。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時