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ym

叩きつけるような雨の中、俺は大ちゃんの姿を探した。
傘の一つもなく探す俺は人々の目には滑稽に映っただろう。

ズキン。

警鐘のように痛み始める頭。
まるで拒絶しているように。この雨の中にいたくないと言いたげに。

一瞬見えた光景はいつのものだろうか。


「大ちゃん!!!」

想いに浸るよりも先に大ちゃんを見つけた。
あの景色はもう見えない。
瞳に映るは大ちゃん驚いたような表情。

確かに距離を縮め大ちゃんを連れて楽屋に戻ろうとしたとき、彼の表情が変わった。

刹那にして絶望に歪む。

「山田!後ろ!!!」

大ちゃんの指さす方に振り返れば雨に反射して何倍にも膨れた赤のライト。

ズキン。ズキン。

この光景は初めてじゃない。
2度目だ。
あの日もそうだった。雨がひどくてこんな天気で運転なんてしたくなかった。
あの日も同じだった。同じコートを羽織って、雨の中で。この赤を見てこの色を恨んだ。

全部がスローモーションのように感じれて、されどどこか冷静になれて。
嗚呼。このままでは大ちゃんも巻き込まれる。

今全力で押し出せばかろうじて大ちゃんは助かるかもしれない。

振り絞れるだけの力で押し出す。
そう、あの時の俺もそんな表情をしていたと思う。あの人だってこの光景を見たのだろう。
そんな苦しそうな顔しないでよ。俺だって怖いんだから。

ズキンズキンズキン。

トラックが近づくに連れて強まる頭痛。
それは俺の終点を表しているようで。まだしたかったことは山のようにあるがこれで全て終わるのだ。

良い人生だったと思う。ただ、ある人の私怨に巻き込まれさえしなければ。

自身の終わりを受け入れ諦めた時にトラックよりも軽い衝撃が俺を包んだ。

頭を抱き抱えられてぶつけないようにしつつもギリギリ俺をトラックにぶつかる範囲外に押し出す。
俺を抱き抱えるようにしながら倒れ込んだあの人。

頭痛が最高潮に達する。

あの日もそうだったんだ。

こうやってこの茶髪を赤と絡めてみることになって。
どうしても好きだったあの人が俺のために流した赤が。俺のメンバーカラーが。トラックの赤いライトがどうしても憎くて。

グッとどうにか体を持ち上げた彼は俺を確かに見据えて笑った。

「よかった」

ねぇ。何にもよくないよ。君がそんなになって何がいいんだよ。
どれほど謝れば今までのことを許してくれるの。なんでもするからさ。こんな俺を許してよ

伊野尾ちゃん。

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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

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