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ym

やはりというべきか次に会ったときもまた何事もなかったかのように“伊野尾ちゃん”は俺に接してきた。
距離感も離れも近づきもしない。ただ壁を挟んで常に動き続ける。
磁石の同極のように。付かず離れず。

誰にでも向けるその笑顔の裏は誰にも見せないように。ペテン師のような人だ。

画面の向こうの人は気づかない。彼の瞳の奥が笑っていないことに。真っ黒な何かが蠢いてまとわりついていることに。
隠し通すのが上手い人だから。

バチっとあう瞳。一瞬の虚無から柔らかな笑みに変わるそのグラデーション。
何も俺の前で取り繕う必要なんてないのに。
俺のことが憎いなら、俺の前でくらい負の部分を曝け出して黒を掻き出せばいいのに。

あの人の真意はいつだって読めない。
俺の想像の範疇にとどまってくれない。


「なぁ、なんで俺のこと突き飛ばしたんだよ」

ある日、二人っきりになるタイミングが偶々あって投げかける言葉。
できるだけトーンを落として。睨みつけるように威圧を放って。

「次。次、俺を捕まえれたら。いいよ、教えてあげる。またね、山田。」

どれほど俺が頑張ろうと彼の仮面を取ることができない。ヒビの一つ入れられない。
飄々とした彼の背中は前より薄く華奢に見える。
何か言葉を紡げばまだ彼を繋ぎ止めれたかもしれない。
しかし俺にはその語彙がなかった。勇気がない。


後悔したのはそれから五日後。
あいにくの雨の日。
全員での収録が控えた日であった。

「伊野尾が消えた」

薮ちゃんから告げられた言葉に驚きを隠せなかった。
もし今日、“伊野尾ちゃん”がきていれば話の続きを聞けたのに。それを待たずして彼は姿を眩ませた。

聞けば三日前の仕事を無断で休み、それから連絡がつかなくなったそうだ。

窓の外は轟々と雨が地面を叩きつけ周囲が確認できない。

「俺、ちょっと外見てくる。いのちゃんもしかしたらくるかもしれない。」

すっと手を上げて部屋を後にした大ちゃん。
無性に嫌な予感がした。
外に出てはいけない気がして。でもこれをどう伝えれば大ちゃんを止めれる。
記憶がなくても“伊野尾ちゃん”と大ちゃんの仲がいいのは二人の行動を見ていれば明白。
大事な友人を探しに行きたい気持ちは非常によくわかる。

しかし今日ばかりはダメな気がするのだ。
大ちゃんを追いかけようと立ち上がる。

「涼介」

俺の袖を掴んで見えがてくる知念。
その目の奥の心配は見て取れる。

だが大ちゃんは俺の大事な友人。失いたくなかった。

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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

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