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あれから何も変わらず俺たちの日常は進んでいった。
俺が“伊野尾ちゃん”のことを知らないことが馴染んで、もう誰も触れて来なくなって早数週間。
相変わらず俺が“伊野尾ちゃん”に会えるのは全員での仕事の時だけ。楽屋では一目見ることも叶わない。
正確に言えばベストの楽屋の方に行けば会えるのだろうが何せ勇気が出ない。
思えば俺は一度だって彼の悲しそうな表情を見たことがない。
他の人たちのその表情は嫌というほど見たのに。
そして、俺にはカメラがある所以外で他のメンバーに見せる笑顔を向けてくれない。
あの花のような笑みは主張し過ぎず、それでもなお凛としてそこにいる
俺にはその笑顔どころか笑いかけてもくれないくせに。
それもそのはずで、俺たちはほとんど話さない。世間話も何もない。
一度、たった一度だけ話しかけてくれたことがあった。
が、その時に俺はあろうことかひどい頭痛に見舞われてその場に崩れ落ちてしまった。
まるで“伊野尾ちゃん”を拒絶しているかのように。
少し時間が経って治った時、彼は俺を見て、そしていつか病室で見たあの顔を俺にむけ『ごめんね』と笑った。
それ以降、必要最低限しか俺とは話してくれなくなった。
どう考えても俺が彼に気を使わせてしまっている。それなのに笑ってほしいと思う俺は強欲なのだろうか。
今日もきっと彼はカメラがあれば俺にも裕翔や大ちゃん。その他面々に向ける笑顔を見せてくれる。
こんな俺がいうのもお門違いだが彼には笑っていてほしい。
その笑顔がどこかで俺のエンジンの潤滑剤になっているような気がするから。
他のメンバーにも笑ってて欲しいが彼の笑顔は別だ。
『や〜まだ〜』
ふと聞こえた声。靄に紛れた誰かの声。
後ろを見てもどこを見ても俺しかいないこの状況で一体誰が笑ってくれたのだろうか。
この声の持ち主に一目会えたら、俺だけに笑ってくれたら。
独占欲が出たっていいじゃないか。
だってきっと、喉の奥から手が出るほど欲しかったものなのだから。
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追記、途中謎にリンクが挿入されておりました。
作者が誤っていれてしまったものだと思われます。
ご不快に思われた方がいらっしゃいましたら誠に申し訳ありませんでした。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時