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ym

結局、俺は楽屋で“イノチャン”に会うことができなかった。
単純にまだ来ていないのか、すれ違ったのか、避けられているのか。おそらくは第三者であろう。
これからあるのは全員での収録。
ファンの子達にとってみればメンバーの関係が可笑しくなっていることくらい一目瞭然であろう。
取り繕うことはできる。ありがたいことに賞をいただいたくらいであるからそこそこの自信はある。
しかし、何もない状況で演じろ、と言われればパフォーマンスが落ちるのも当然の成り行きである。
事前に確認したいことはあったがどうにか乗り切ろう、と思ってスタジオに入った時だった。

「山田。」

俺の知らない声が後ろから降ってきて振り向く。
姿を認めてもなお、そこにいるのに記憶(そこ)にいない彼。すなわち“伊野尾慧”出会った。

「初めまして。伊野尾慧です。山田は俺のことを伊野尾ちゃんって呼んでた。俺たちそこまで絡みがあるワケじゃないから無理して絡みにこないでもいい。」

ヒカと同じくらいの身長。肩幅はあるが全体的に華奢。女性なんじゃないかと思うようなその顔。何もかも俺がネットで見た情報と一緒である。
俺を呼び止めるだけ呼び止めて話し終わったと思えば“じゃ、”とだけ言って俺の横を通り抜けスタジオへと向かう“イノチャン”改め“伊野尾ちゃん”。
なんとなくテキトーな人だと思った。
だが、俺の知りたかったことはある程度知れた。これで大丈夫。ファンの子達にバレることなく立ち回れる。スタジオの方に見送ったその背中をどこかで見た気がするのはきっと気のせいじゃないのだろう。

収録中、俺と“伊野尾ちゃん”の絡みはほとんどなかった。たまに向こうから振られる話題に答えるだけ、と言った所だろう。俺は覚えてないが向こうは俺のことを覚えている。だから適度に俺との絡みを生み出しておいてくれたのだと思う。テキトーであって適当。この言葉に尽きる。見えない彼の心理は昔からなのだろうか。

「はい、カット!!本日はここまでとなります!!」

終了の声がかけられゾロゾロと楽屋に戻る面々。

「ねぇ、今日俺うまくやれてた?」
「うん。違和感なかったと思うけど。」

近くにいた大ちゃんに今日の出来を確認すれば良かったよ、と返ってくる。
俺が問うた時に一瞬悲しそうな顔をするのはやめてほしい所だ。
果たして俺はいつまでメンバーにそんな顔をさせてしまうのだろうか。

あの日から消えた記憶を今日ばかりは酷く恨むこととなった。

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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

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