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最近、大ちゃんたちの様子がおかしい。
と言っても二ヶ月ほど前からだ。
俺が頭をうっかりぶつけて入院したあの日。
その日から何もかもがおかしくて。
俺たちは七人のグループであるというのに、もう一人いるとか言い始めた時にはなんだか変な世界に紛れ込んでしまったようだった。
“イノチャン”
それが俺の知らない八人目のメンバー。
仕事復帰してからあまりにもしつこく覚えてないのか、と問われるものだから自分で調べてみれば出てくる情報。確かに、そこには“イノチャン”が存在していて、大ちゃんとのツーショットをよく見かけた。
中性的な顔立ちでその割には広めの肩幅。全体的に華奢で本当に男性か、と疑うくらいには綺麗であった。
“イノチャン”はあくまであだ名のようで本名は“伊野尾慧”
ヒカと同い年で薮ちゃんと同期。
調べれば調べるほど、彼の存在は確立していく。
されど、どんなに記憶を漁ったとて、俺の中に彼に関する記憶はない。
ずきん、と唸る頭痛を感知し、スマホを投げ出す。
家に置いてある頭痛薬を手に取り飲み下す。いくら即効性とはいえ効き出すには多少の時間を用いるのでそれまで大人しく待つことにした。
大ちゃんたちがおかしいのと同じくらいから俺の中で巣篭るようになったこの頭の痛み。
何に反応しているかは定かではない。しかし時折襲い来るそれを無視できるほどではなかったのだ。
明日の収録には俺の知らない彼がくる。
仕事の復帰だそうでそれを俺に告げたチーフマネはどこか嬉しそうに笑っていた。
俺が知らないだけで、俺が忘れているだけで確かに存在する彼。
ベットに身を投げればボフッと俺の体を受け止めてくれる。
果たして明日、“イノチャン”はベットのように俺のことを受け止めてくれるのか。淡い疑問が脳裏を過ぎた。
翌日、どこか緊張感を覚えて普段よりも尚のこと早く着いた楽屋。入り時間はまだまだ先で当たり前の如く楽屋には誰もいなかった。
時間を潰す術なんて俺にはゲームの一つがあれば十分であるから何をいうでもなく時は刻々と過ぎていった。
程なくして何やら賑やかさを覚えて外へ出てみれば案の定他のメンバーたちがワイワイと合流していた。
しかし、そこにあの人の姿は見受けられなかった。
人の塊はそのうち二手に分かれ各々が部屋に入っていく。
人数の多い俺たちは基本二つ楽屋が用意される。ベストとセブンで分かれる習性があるからきっと今日だってそうだったのだろう。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時