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「光に大ちゃん。おはよ。」
「うん。いのちゃんもおはよ」
「おはよ、いのちゃん。体調大丈夫?」
「割と元気よ。今日、先生が来たら点滴取れるって言ってたしね。ちょっと嬉しい。」
ヒカの問いにお得意のテキトーを用いて答えた彼はどうやら俺が想定していた状態と違ったように思えた。
何も変わらない。
よく見慣れた彼がそこにいる。まるで昨日のことなんて覚えていないかのように。
「俺が言うのもアレだけど、結局山田は元気だった?」
「今検査中。」
「そっか。あんまり俺に気を遣わなくていいよ。山田の記憶がない原因俺が突き飛ばした時の衝撃かもしれないし。そうなら自業自得。何もお前らが背負う必要ないんだから。」
いのちゃんの記憶にはしっかりと昨日があって、その内容を明白に覚えていることだろう。
告げる口調は至って穏やかで、こちらに対しての心配の色すら伺える。
本当に大丈夫なのか。はたまた俺たちに心配させる気がないだけなのか。
どこまで行ってもこの人に心理戦で勝てる訳がないのだ。
「で、なんで俺のとこ来たの。様子見かなんか?」
「いや、普通に心配で。」
「俺大丈夫だって。お前ら今日仕事ないの?」
「俺ら今日オフ。」
「ほーん。しばらく休みしかねぇ俺と大違いだな。」
自虐的なことばかり言うのも彼の癖。それでも肩を揺らして笑うそれは俺たちが求めていた笑顔そのものだった。
それからしばし、他愛のない話を繰り広げ、楽しんだところで山田の検査結果が出る時間を迎えた。
「ごめん。いのちゃん。俺たちそろそろ行かないと」
「ああ。検査終わったのか。ごめんね。俺いけなくて」
申し訳なさそうに笑った彼。そんな彼の頭をぶっきらぼうに撫でてやれば“大ちゃんのばか”と返ってくる。
ひとまず、今日の成果としてはいのちゃんは大丈夫そうであったことが発覚しとこと。それに尽きるだろう。
彼の病室を後にし山田の方に向かえば丁度検査から戻ってきた山田に遭遇した。とはいえ、検査で疲れたのか車椅子に座り看護師さんに押されながらスウスウと眠っていた。
そのままお医者さんに案内されるままに部屋の中に入り詳しく話を聞いた。
俺の隣にはもちろんヒカがいる。普段天然で抜けているがこう言う時は頼れる大人になる。
話が進むたびに暗くなる雰囲気。
トーンが少しずつ下がりそれでもなお淡々と語られる内容に身震いがした。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時