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翌日、山田は何も変わらず目が覚めた。
普段の日常で朝起きるように。
一つ俺たちの希望を摘んだと言えば起きてなお、彼の記憶にいのちゃんは存在していなかった。
昨日が夢で、嘘で。本当はドッキリなんだ、と言う一種の願望は意図も容易く否定され、処理されてしまった。
少し、山田と話した後、ナースコールを押し忘れていたことに気がつきヒカが押した。
状況を医師に軽く説明した後看護師に再度怒られた。
デジャブである。
ただ前回と違うのは朝に押したためすぐに山田は検査に送られ病室には健康な六人のみが残されることとなったことだろう。
今日はたまたま俺とヒカがオフの日。
その他面々は相変わらず仕事がある。
やまだの検査結果は俺たちが聞いて報告することになり仕事組は病室を後にした。
心配そうに俺たちを見てきたのは薮くんで、こう言った役回りは彼に回ることが多く俺たちで大丈夫なのか、と思いを巡らせてくれるようだった。
きっとそれは俺たちに信頼がないのではなくて彼だから知っている真実と現実を突きつけられる辛さを俺たちに渡してしまうことが不安なのだろう。
そんな彼を二人で肩組んで笑顔で見送れば無理すんなよ、とだけ帰ってきた。
彼も大概過保護である。
そんなこんなで全員が病室を出た後、しばらく検査は終わらないと言われたのでもう一人に会いにいくことにした。
昨日、いなかったただ一人に。
正直言うと残っていたのが俺一人だった場合、いけなかったと思う。
昨日のショックは俺ですら癒えていないと言うのに本人はどれほどのダメージを受けたことか。
山田が気絶した後薮くんから話されたいのちゃんからの伝言。
それに基づき、できるだけいのちゃんのことで変に接触しないでほしい。と薮くんに釘を刺された。
山田はいのちゃんのことを触れすぎるとまるで世界を拒絶するかのように意識を手放している。
それを考慮するならば医者の話を聞いてから慎重に進めるべきだ、と薮くんは語った。
これに対してに異論はない。きっと最善の策であると全員が飲み込んだ。
俺は第三者であるのに恐怖を抱き、当事者である彼はどんな思いで昨日を過ごしたのか。見当もつかない。
ドア前に立てば不可解な緊張感に襲われる。
一つ二つ、息を整える。微かに震える手を握ってくれたのは一個上のちょっと天然な彼であった。
大丈夫、と安心させるように。
ノックともに中に入れば窓の外を眺める彼がいた。
不意に振り向き見せた笑顔は花のようだった。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時