検索窓
今日:62 hit、昨日:72 hit、合計:14,865 hit

11 ページ11

yb

体を起こし俺を見据えるこいつはたった数日でベットから降り自分で歩けるようになっていた。
腕の骨折だけなのだから当たり前なのではある。
しかし、何度でも言おう。
こいつはトラックに轢かれている。

自由に歩いているとはいえ、こいつの近くには点滴がある。
事故の時に出血量が多く貧血気味らしい。それの補助ということで点滴が打たれている。

カラカラと移動式のそれを連れて俺の元まで歩いてくる。

「お前寝てなくて大丈夫なのか?」
「薮は心配性だな。骨折だけだっていってんだろ。バカやぶ」
「誰がバカだ。どちらかというとお前の方がおかしいんだよ。なんで轢かれたやつがピンピンしてんだ」
「そりゃ俺が超体力の健康児だから」
「ダンスですぐバテて季節の変わり目に風邪ひきやすいお前がそんなわけないだろ」

互いに軽口を叩き合う俺たちの間柄。
軽口の応酬の後には必ずといっていいほど俺たちの笑い声が響く。
今回だって御多分に洩れず。
それが嫌だったりすることがないのは昔からそうであり、どこまで行っても腐れ縁なせいだろうか。
入り口付近でそんな会話が繰り広げられ、その後にまたベットの方に移動する伊野尾。
その後をついていけば近くにあった椅子が引っ張り出され俺の方に差し出される。
その間無音で行われるのは最早慣れである。

俺は椅子に、伊野尾はベットに腰を下ろし向かい合って顔を合わせる。
改めて見ればよく整った顔立ち。
黙れば王子、喋ればテキトー男。
コントラストの激しいそのキャラクターが多くの人の心を射止めるのだろう。

「何。こっち見つめて。なんか顔についてた?」
「いや。特に何も。そういや聞いたか?今日メンバー全員揃うの。」
「うん。聞いた。みんな忙しいのによく日程合わせれるよな。」
「そりゃそうだろ。お前いつから仕事復帰?」
「とりあえず腕のこれと点滴取れたら。だから、一ヶ月後とか?俺は元気なんだけどね」

左腕を持ち上げ、ギプスを忌々しそうに振るう。
右腕には点滴が刺さっておりこちらはあまり動かせないようだった。
口調だけならば本来の状態と何ら変わりないのに自身の怪我のせいで仕事ができないのが心底うざったいようだった。

「仕事終わりなんだろ?」
「まぁ、一応。みんな揃ってから山田の顔でも見に行くよ」
「お疲れ。全員揃ってる時に起きてくれるといいけどね。あいつまじいつ起きるんだよ」

口を尖らせ文句を滑らせるこいつを不覚にも可愛いと思ってしまったのは気のせいだと思う。

12→←10



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (49 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
155人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。