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仰向けになって深紅の海に身を置く彼は虚な瞳で俺を捉えた。
はくはくと動く口からは無意味な息しか溢れれず、言葉になっていなかった。
言葉が聞こえなくても、俺に必死に何かを伝えようとしていることだけは目を見れば一目瞭然であった。
できるだけ聞こえるように、と彼の口元まで耳を寄せる。
誰かが遠くで俺の名前を呼んでいた気がするが、彼の声の方がよほど俺には重要で、それらを受けつけようとはしなかった。
わずか数秒のうちに彼から聞こえた音をどうにかして頭の中で紡ぎ合わせる。
どこかでピースをなくし揃えるのが困難となったジグソーパズルを埋めているような気分を俺は味わっていた。
目の前に瞬く色の数々は俺の意識をこの世に止めようとはせず、よくわからない世界に誘ってくる。
意識を失いたいのは俺ではなくてきっと彼であっただろう。
そんな彼より先に閉ざされる俺の瞳が最後に写したのはまるで絵画のような、映画のような。そう俺に思わせた愛しい彼の惨憺たる姿であった。
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米山瑞稀(プロフ) - なにわ男子 (3月26日 20時) (レス) id: a504ed4635 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:悠璃 | 作成日時:2024年2月14日 20時