どの手を掴むかは自分次第。 (ページ8)

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ar side ページ8

通りゃんせ通りゃんせ
ここはどこの細道じゃ
天神さまの細道じゃ
ちっと通して下しゃんせ

どこからか聞こえる。これは…誰の声だ。

御用のないもの通しゃせぬ
この子の七つのお祝いに
お札を納めにまいります

俺たち以外に誰もいないこの道で、一体誰が歌うのか。

行きはよいよい帰りはこわい
こわいながらも
通りゃんせ通りゃんせ

視界の端を遮った小さな子供。あの子の声だろうか。
きた時に通ったあの橋のそばでちょこんと座るその子の声は酷く透き通っていてどこまでも伸びるようなものであった。俺の他に誰も聞こえていないのかみんな疲れが溜まっているのかどちらかはわからないが無言のままきた道を帰る。
それほど離れた場所にはきていなかったのに終わりのない道を歩いているようだった。
重い足を動かし続けてどれくらいたっただろうか。
ようやく見えた旅館の姿に思わず息が溢れた。

「え、本当にどこに行ってたんですか？」

旅館に入ってすぐに言われたスタッフからの言葉。そんなに遅くなったつもりはなかったのだが時計を見れば午後8時を示していた。確かに近場に行っていた割には遅い時間である。

「とりあえず、明日の朝は早めにここを出て東京に帰る予定なので今日は早く寝てくださいね。」

スタッフさんに釘を刺され今日泊まる部屋の鍵をもらい風呂は後で済ませればいいか、と布団にダイブした。フッカフカの布団は俺の体を拒まずそのまま包み込んでくれる。その柔らかさと温もりに耐え切れずゆっくりと手を引かれる睡魔に誘われた。