ちびれんくん8

▽ ページ48

紫耀side

「楽しい？」

廉「あい！風が気持ちー」


気づけば、夏は何処かに行ってしまっていて

この時間は「秋を感じる」ほど。


「そうだね。寒くない？」

廉「あい！」


一応温かい格好はさせてきたけど、秋風が

肌寒く感じるから心配になって聞けば大丈夫と返事が返ってきた。


「ねぇ廉くん？」

廉「ん？」

「今幸せ？」

廉「あい！幸せだよ？紫耀も居て、みんないて…でもね、廉くん…なんか寂しいの」

「え、」

廉「大事な事、、わしゅれてる気がして…寂しい、」


そう言った廉の言葉に、思わず足を止めた。

大事な事、それはきっと俺たちと過ごした記憶の事。

何となくわかるのかな、大事な物を忘れてるって。


「寂しいよね。大事な何かを忘れてる気がして、でもそれが分からないって」

廉「っ、」

「でも大丈夫。紫耀が傍に居るよ」


そう言うとぽたぽたと大粒の涙が廉の目から零れて

道路に大きなシミを作っていく。


「大丈夫。いつかきっと、その大事な事を思い出せる日が来るから」

廉「っ、涙」


しゃがんでそっと廉を抱きしめてやる。

大丈夫。大事な事を忘れてる。それに気づけてるなら絶対。




＊






＊






＊



それから落ち着いた廉はまた、俺の手を取り歩き始める。


「あ、あの子…」

廉「んぅ？だぁれ、お友達？」

「っ、えっ、と…」


歩いてると前から、女の子とそのお母さんが歩いてきて

あっちも俺らに気づいた様子だった。


そう、その女の子は廉と一緒に誘拐されていた子。

女の子の方は記憶喪失にはなってないみたい。だけど、その分

あの時の恐怖を覚えてるだろうから、しんどいだろうなぁ。


母「あの時は、娘を助けて頂き、本当にありがとうございました」

「いえ、、見つかって…見つける事が出来て良かったです」

母「まだ記憶…」

「はい、戻ってなくて…」


母親の方は知ってるみたいで、気遣ってくださった。


女の子「ありがとーね、あの時」

廉「あの、とき…？」

「っ…」

女の子「色んな話、してくれたから、怖くなかったよ、」


廉、そんな事してたんだ。さすが廉

と思いながら記憶が戻らない廉ははて？何の事？っていう顔。



暫く話して、バイバイしてまた歩き始めた

そんな時だった。


廉「っ、いっ…！」

「え、れん？れん！」


廉が突然頭を押さえて、痛み苦しみだして

その場にしゃがみ込んでしまったんだ。


急いで俺もしゃがんで廉に声を掛ける。

けど、すぐに意識を飛ばした

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