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自販機 ページ43

七海side


任務帰り、報告書を出す為に高専に寄った。

職員室を出て、中庭を通ろうとしたら、


「…Aさん…?」


自販機を見上げるAさんがいた。


「こんなところでなにをしているんです?」

話しかけると、Aさんは肩をびくつかせた。

そして、恐る恐ると言った様子で振り返り、私の顔を見てさらに怯える。


「…おひとりですか?」

『……』

あたりを見渡しても、禪院さんや狗巻くんは見当たらない。


再び、Aさんに目を向けると、その小さな手には財布らしきパンダ型のポーチが握られていた。


「……なにかお困りですか?」

私は膝を折り、彼女の目線に合わせて、そう問いかけた。

でも何も答えない。

明らかに困っている顔なのに。


「私にできる事ならばお手伝いしますよ。」

できるかぎり優しく、笑みをつけて話す。



彼女はしばらく俯いて、黙り込んでいたが、かばそい声でポツポツと話し出した。


『‥‥あの、……Aは、まきちゃんに……じゅーすかってきてって…いわれて……』

「はい。」

『……それで、…じはんきにきた、んです、けど、………その、わかんなくて……』

「なるほど。自動販売機の使い方がわからないのですね?…簡単ですよ。まずはここにお金を入れて、それから欲しい飲み物のボタンを押します。そしたら、下から飲み物が出てきますよ。あぁ、お釣りも忘れずに受け取りましょうね。」


そう教えてあげると、彼女はぺこりと頭を下げた。

見られていると、やりづらいかもしれない。

そう思い、私は。

「では、私はこれで失礼します。」

そう言ってその場を去った。

でも心配なので、壁の陰から様子を伺う。

彼女は、拙い動作で、お金を入れ、ボタンを押し、出てきた飲みものを恐る恐る取り出していた。


よかった。

ちゃんとできましたね。

いつもなら、そう褒めるところだが、今は状況が違う。

彼女は以前の彼女ではない。

記憶が、幼い頃に戻っている。


ちょろい彼女と臆病で人間不信な彼女。


人格に差がありすぎる。



いつまでもこのままは嫌だ。


私のことを忘れて、怯えた目を向けないでほしい。








「……これは、そろそろ五条さんを問いたださなければなりませんね。」




そう決心した。

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シシマチ(プロフ) - さざんかさん» コメントありがとうございます。楽しんで読んでくださって、とてもうれしいです。更新頑張ります! (2021年6月14日 21時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
さざんか(プロフ) - わー!!気になるところで止まってらっしゃる;;更新お疲れ様です!めちゃ楽しませてもらってます!!続きも楽しみにしています! (2021年6月14日 1時) (レス) id: 20c7caba78 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 43yomi1さん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しい限りです。更新頑張ります! (2021年6月11日 17時) (レス) id: 6141eb3956 (このIDを非表示/違反報告)
43yomi1(プロフ) - 初めまして!シシマチ様の小説とっても素敵で、思わず惹き込まれてしまいました…!更新楽しみにしてます…!!!!! (2021年6月10日 15時) (レス) id: d2940ba0c0 (このIDを非表示/違反報告)
シシマチ(プロフ) - 小手鞠さん» コメントありがとうございます!更新頑張りますね(^^) (2021年6月10日 0時) (レス) id: 5733ebb1d6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シシマチ | 作成日時:2021年6月3日 21時

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