愛して【ツイステ】 (ページ2)

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甘い香りに誘われ【エース】ページ2

『あ、エース』

目の前で、Aは驚いたように目を見開いた。
その仕草さえ可愛らしく見えるのだから、恋と言うものは恐ろしい。

───入学式の時から、ずっと気になっていた。
男子校に舞い降りた彼女は、本当に"可憐"の一言で。

この世界では珍しい、漆黒の髪に何よりも深い黒曜石のような瞳。
近くを通れば女子特有の甘い香りがして、誰もが彼女に惹かれていた。

「紅茶？俺も飲んでいい？」

『ん、いいよ。クッキーも食べる？』

あーんとクッキーを口許に近づけるA。

…恋の病、すでにつける薬なし。

「あー…うまっ」

『自信作』

ドヤッとAが胸を張る。
へいへいと適当に流すとチョップを食らった。

──帰るなよ。

そう言えたら、どんなに良いか。

「監督生さぁ、今どんくらい帰りたい？」

『こんくらい』

大きく手を広げて、約一メートルほど。

ギリッと、監督生に気づかれないよう唇を噛む。

────甘い香りに誘われたら最後、二度と元には戻れない。

俺の気持ちを知らない彼女を見ながら、机の上のクッキーをまた一つ咀嚼するのだった。