時が経ったとしても ページ21
.
JO side
「……ってことを」
JO「…」
「この前、酔った勢いで思い出して…」
はぁ、憂鬱 と
そう呟いて俺の肩にもたれる気まぐれなお姫様は、俺が日本に出国する前の晩だと言うのに、俺の部屋に押し掛けてきて晩酌を強制してきた。
俺は苦笑しながら、焼酎のグラスを仰ぐ。
すぐそばにあるAの耳は真っ赤だ。
Aがした昔話。
…もう、何年前になる？
Aとテンが出会った頃の話だ。
当時から俺は、2人の関係性をよく知っているつもりだった。
Aはテンに一目惚れして、テンもそれに乗り気で、あいつには当時付き合っている子がいたにも関わらず、2人は関係を持った。
後から聞いたけれど、みんなが応援してくれる手前仲良いふりをしていたけれど、テンは当時の彼女にすっかり愛想を尽かされていたらしい。
でも、まあ、それって言い訳だよな。
せめてそっちの関係を清算してから、Aと付き合うようになればよかったのに。
あのときテンが順番を間違えたからか、今の今までAとテンの関係はこじれている。
Aは自分から誘い出したにも関わらず、いざテンが1年以上付き合った彼女と別れたとき、ひどく落ち込んでいた。
“私が2人の仲を引き裂いてしまった”
“テンの大切な人を、テンから奪ってしまった”
…なんて。
とても、真剣な、深刻な様子で。
俺は正直、驚いた。
だって、自分から浮気を持ちかけたのに。
あんなにもピュアに傷付いたAの姿は、まるで普段のAと別人かと思うくらいだった。
そのあと俺は、当時テンが繰り返すように言っていた「Aは泥棒猫になるには純粋過ぎる」という言葉に、妙に納得したものだ。
“こっち”の方こそが、Aの本当の姿なんだって。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 976人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：れいら
| 作成日時：2022年6月22日 1時
