美しすぎて、ごめんなさい。５ (ページ18)

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…そんな、最低なこと、言う人だったんだって。

私、けっこう、ショックだった。

私は自分からこの関係を持ちかけておいて、本当は心のどこかで、テンに突っぱねてほしかったのかもしれない。

性格が清廉潔白で、まさに私の憧れの星。
手の届かない、遠く遠くの、お星様。
そんな風にいてほしいと、彼に望んでいたのかもしれない。とんだ矛盾を胸の中に抱えていたものだ。

もしあのときテンが私を拒んでいれば、私は彼を心の底から尊敬できるロールモデルとして、今日の日まで慕うことが出来ていたと思う。

恋愛対象として見ることもなく、ただ彼の人生に介在することのない、脇役として。

だけど、私はあのテンの一言で、テンも人間なのだと知った。

どんなに眩しく見える彼でも、私にとって完全無欠な存在に見えても、それでもテンだってひとりの人間に過ぎないのだと。

彼の諦めの悪さと、人を裏切る瞬間。

それを知った私は、

……もっともっと、テンのことが、好きになってしまった。

せっかく広げた食事も早々に、コンビニの袋にまたしまって

私はまたテンの手を握って

もっともっと、暗い場所へと、2人で歩いていく。

私は、こんなにも心を奪われた相手と形づくる2人の世界が、どうも不安定なものに思えた。
だけどその分、この関係にはとても甘く、麻薬のような中毒性があった。びりびりと痺れるように、心地いい。

こんな関係に、果たして未来はあるのか。

…無いに決まってる。

だって、まだ始まってすら、いないんだもん。

私とテンは歪んでいる。

歪んだまま、結ばれてしまった。

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