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緑ルート3 ページ17

「あーAー?おれおれ」
「…ん?」
「お前今てつやん家だらぁ?」

間延びした声。これは…

「酔ってるでしょ」
「酔ってねーよばーか。なぁ、今から来て…」
「…は?」

りょうくんが、あいつ酔ってんの?めんどくさ!って笑う。

「なに言ってんの、ごはんはどうなっ…」
「もう終わったんだよ、いいから俺ん家来い」

一方的に電話を切られる。

「としみつなんて?」

てっちゃんがたずねる。

「家に来いってさ…」
「まーたぁ?あいつ酔ったらすーぐ誰かパシるからなぁ」

しばゆーが言う。
たしかにその通りだ。
けど、なんで?

彼女を連れて帰ればよかったのに。
泣き上戸なところを隠すため?
それとも、本当に隠したかったのは童て…
いや、なんでもない。

「今回の犠牲者はAでしたー。はい行ってらっしゃーい」

虫さんが楽しそうに言う。

「あ、タクシーで行きなね。あんな運転されちゃ岡崎市民が困るから」

りょうくんまで…
ずるずると玄関へ引っ張られる。
失恋中なので行きたくありません…

どんな顔して会えばいいの?
いつもなら嬉しいけど、このタイミングはもはや試練だよ…

だらだら靴紐を結ぶ。
その後タクシーに揺られ、さっきの自分の運転のひどさをようやく実感した。

しばらくして、としみつの家の近くまで来た頃。
まるで見ていたかのようなタイミングで、鍵開いとる、とだけメッセージが届いた。

てっちゃんがくれたお金を渡し、タクシーを降りる。
そうして、目的のドアの前で突っ立ってから、もう五分。

帰りたい、会いたくない。
…やっぱりちょっとだけ会いたい。
私が帰る代わりに彼女が来たりしても嫌だし。

あーもうやだ!
なんなの?なんで私を呼んだの!
こんな状況じゃ優越感にも浸れないよ!

はあ。意を決してドアノブに手をかける。
すると、まだ引いてもないのにひとりでにドアが開け放たれる。

「…お前、そこでなにやっとるん?」
「え?あ、今着いて…」
「うそつけ。モニターで丸わかりだわ」

…えっ、うそ。

「いつの間にそんなのつけたの?」

いや、そうじゃないでしょ私。

「二週間くらい前?」
「あ、そうなんだ…」
「……」
「……」
「…早く入れよ」
「わっ、」

肩に手を回され、勢いよく引き込まれる。
と同時に、香水の甘い匂いがふわっと舞う。

…甘い?
違う。出かける前はこんな香りじゃなかった。
すぐに察する。
この香水は彼女のものなのだと。

靴ひもをほどくふりをして、うつむいて唇を噛みしめた。

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作者名:V | 作成日時:2018年10月29日 17時

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