(十五) 足首と火花 ページ16
「外に、出られたわ、私！」
彼女は嬉しむよりもただ驚いたというような顔をして、園内を眺めていました。
「なんだか、世界が違って見える。この園は、本当に美しいところだわね」
「その通りだね」
彼はうなずきながら、この毎日の幸福というのを理解しました。薄い存在感の廃墟と彼女。そこにたたずみながら、二人は手を繋ぐというただそれだけ。なにも考えず、感じず、彼女の体温だけを愛おしく思う。彼は反対側の彼女の手を取ります。
「キスしようよ」
彼女ははっきりと彼を見あげて、少しの間の後、
「ええ」
言って、目を瞑りました。
彼と彼女がふれたとき、ぱちっと火花のようなものがあがります。少し痛みがあるのだろうか、二人はただ一瞬眉を顰めましたが、また強くつながり合ったのでした。それは長い間、二人はおたがいに身を沈めて、やっと離れたと思えば、また沈み合います。
しだいに、彼女の目尻には透明な粒が浮かびました。彼はそれを見つけると、唇を離してまた慈しむようにそれを見て、親指で優しく払いました。
「きれいだ、ああ、きれいだ。この世界のどんな人間よりも、君はーーー」
そう言いかけたのを遮るように、彼女は彼の背に腕を回して抱きつきました。彼の厚い胸板と高い身長を前に、彼女は小さく見えました。彼が彼女を抱きしめ返したときには、すっぽりとその頭までもが覆われるようでした。
そのとき、彼女は「人間と比べないで」そう、たしかにつぶやいたのです。彼の胸に鼻先を当てて、まるで直接心に語りかけるような距離で、しかし彼は気づかずしばらくの密着の後、また罪悪感ない笑顔を見せて彼女の手を引いて歩みはじめました。
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うずのしゅげ(プロフ) - 凪疾さん» めちゃめちゃ嬉しいです…！！ 読み進めたくなるなんてありがたいお言葉をいただいているのになかなか更新できずじまいで申し訳ないです。近々更新頑張りたいと思います！ 絶対…！完結させます…！！ (9月19日 10時) (
レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
凪疾 - とても面白くて、私の好みで、読み進めたくなるような作品だなと思いました。更新楽しみにしてます！ (9月17日 19時) (レス) id: ad3483f622 (このIDを非表示/違反報告)
うずのしゅげ(プロフ) - とよさん» 返信遅れてしまって申しわけございません！！！ 遅くなりましたが改めて、本当にありがとうございます！！ 受験期は、とよ様のお言葉が心の支えでした！！ このお話は、少しずつでも完結させるつもりなのでこれからもよろしくお願いいたします！！！ (5月19日 22時) (レス) id: c82952eeb4 (このIDを非表示/違反報告)
とよ(プロフ) - コメント失礼します。更新お疲れ様です！いつも楽しく読ませていただいてます！受験頑張ってください！！！！ (2023年2月12日 14時) (レス) @page13 id: d1624c287f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うずのしゅげ | 作成日時：2022年12月19日 22時
