32熟知はされてるらしい ページ32
結論から言うと工藤邸には1泊した。
しかし、宿泊条件として突きつけられたものがある。
その条件というのが
「お前が安室くんの懐に潜るって言うなら泊めてやろう」
『……はい?』
これまたタチの悪いものだった。
コイツ、私の身を危険に晒したいのか?と考える程に理解できない。
私のことが好きなら尚更だ。
「腕が鈍ってるだろ?どうしてもFBIに戻りたいと言うなら、奴の懐に潜ってリハビリして来い」
そう。こんな相手に好かれていたら普通はキレる。
飼い主が取り上げた餌を、ブラブラ目の前で揺らし煽ってくるようなこんな男なんて知るかと言いたいところだ。
だがしかし、この男はよく分かっている。
『その話、乗った』
例え殺される危険性があっても好いた女がこれで喰い付かないはずがないと。
上手く乗せられたようで気に食わないが、FBIに戻れるなら背に腹はかえられない。
「じゃあ、これを返しておこう」
その途端、私にキャッチしろとばかりに小さい物体を投げつける。
慌てて受け取ると、それは見慣れた赤いキーケース。
『…なーんで秀くんが持ってるの?』
「机の上にあったからだな」
『そのまま置いとくか届けてよ!』
「そんなことしたら、お前がここに来ないじゃないか。来るなって言うからお前の家には行かないけど、好きな女には会いたいものなんだぞ?」
『じゃあ、会いに来なくなったら?』
「その時は約束を破らせてもらう」
そう言った彼の瞳はどこにいても…地球の裏側にいても追いかけて来そうだった。
今まで定期的に訪れていて正解だったなこりゃ。
まぁ、その大半が仕組まれてる気がしなくもないが…。
ほら、変声機とかカードキーとか。
ほんっと赤井秀一って怖い男だわ。
赤井秀一に好かれた歴代カノジョ様お疲れ様です。
「俺はこれから出かけるからこの家にはしばらく入れんぞ」
『はいはい。心配しなくても何かあったらピッキングするから』
「…やっぱりお前には合鍵を持たせておいた方が良さそうだな」
そう言ってまたキャッチしろとばかりに鍵を投げる。
『物を投げないでよ!』
「お前こそ"はい"は1回だろ」
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作者名:星香 | 作成日時:2019年5月8日 17時