30ほんとに赤井秀一ですか? ページ30
数秒が数分に感じる。
それくらい静まり返った部屋で私は頭の中で整理していた。
その中でようやく導き出された答えとは。
『あぁ!分かった!好きってlikeってことでしょ。なるほど、なるほど』
「何を言っているんだ…。Loveの方に決まっているだろ」
見当違いで呆れたような声でつっこまれた。
『じゃあ、秀くんの事だからそうやって誤魔化そうとしてるんじゃ…』
そんな疑念が湧くのも無理はない。
だって15年以上も一緒にいたのにそんな素振りなかったんだから、もうこれは疑惑でしかない。
そんなことを考えていたのが顔に出ていたのだろう。
「初恋は実らない。そんな言葉があるだろ?あれさ」
まるで心を読み取った彼がそう言ってウィンクをかます。
『誰ですかあんた』
こんな赤井秀一は私は知らないよ。
「ほぉ、惚れた相手にそう言われるのは中々にキツイな」
『待て待て秀くん。君には明美さんという素敵な女性がいたでしょ?まさか!彼女のこと愛してなかったの?!』
「いいや?アイツのことは愛してたさ。ただお前が特別なだけで」
『ダメだよ秀くん浮気しちゃ』
「……」
『黙らないでよ。なんだか本気みたいでヤダ』
「…本気なんだが」
あぁ、困ったな。
こんな状況どうやって切り抜けるのよ。
これでも私は怒っているんだから。
とりあえず本題に戻ろう。
『私が大切だったのを"仮に"認めたとして、それとFBIをやめろと言われたことに関して説明を求めたいんだけど』
本来の本題はそこだ。
なんでこんなにズレてしまったんだ…。
「そんなのお前から笑顔を奪いたくないからに決まってるじゃないか。キツかったんだろ?あの生活が」
『な…んで知ってるの…?』
思えば、私はもうあの生活に耐えられなくて組織を抜けたいなんて言ったが、なぜ抜けかったかはこの男に言った覚えはない。
そもそも潜入している時には一切会っていないのだから当然ではある。
それに、あの時の組織を抜けたいとは初めて口にした言葉だ。
親しい人も作らなかったので誰にも言った覚えはない。
じゃあなぜ彼はその事を知っている?
「実はなあの前日に、ある男から連絡があったんだ。"お前が潜入した国でテロが起こるかもしれない。彼女は諦めて死ぬだろう"って」
『え…』
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作者名:星香 | 作成日時:2019年5月8日 17時