14行き先不明だけど出発進行 ページ14
「時間通りだな」
あれから一夜あけた。
いや、言うならあけてしまったという表現が正しい。
朝なんか来なくていいって生まれて初めて思った昨夜。あれからなにがあったかといいますと
*
*
目の前の男の手足になることを了承したあと。
「今夜中に盗聴器の回収をしておけ、それと明日朝10時に僕の家の前にいるように」
『は?』
多分私の口は見事にぽかんとあいてる。
そりゃそうでしょ。
なんでこの人が仕掛けた盗聴器を私が回収するの?
絶対、君がした方が早いよ。
「聞こえなかったのか?」
『聞こえてるよ』
それだけ聞くと自分の部屋に帰って行く彼。
まさかの要件人間かよ。
こっちの有無聞かずに帰っちゃうの?
そりゃ従うしかないの分かってるけど、イェスかノーかぐらい確認しろよ!!
というのが昨日の流れであり、現在私はよく分からないまま車の助手席に押し込まれました。
誘拐でしょうか?
はたまたこのまま東京湾にでも沈められるのでしょうか?
でもこれだけは言えます。
今日が私の命日です。
「さっきから随分と大人しいな。昨日の威勢のいいお嬢さんはどこへ行った?」
『じゃあ、暴れたいんで扉のロック外してくれます?』
「断る」
それだけ言ってハンドルを右にきる。
うん、こいつの敬語どこいったよ?
まさかブラックホールあたりまで吹っ飛んで消滅したのかしら?
行き先も告げずに車を運転する彼の横顔を横目に、やけに都市部に近づいてることを察する。
この人、私をどこに連れていく気だよ。
「そんな不安そうな顔するな。お前を悪いようにする気は無い」
こちらの表情を読み取ったのかこちらを見て言う。
教習所で習わなかったのか?この人。
『前見て運転してくれるかな?』
「分かってますよ。でも、心配しなくても僕は安全運転第一で、事故をしたことなんて……ないですよ?」
今の間は何?!
やだこの人まさか事故の常習犯なの?
『降りていいですか?』
「ダメですよ?…何を想像したかだいたい分かりますが、よくいるんですよ。ことある事に車をボロボロにする知り合いが」
そゆことね。
良かった…。
冥土の旅にドライブしてなくて。
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作者名:星香 | 作成日時:2019年5月8日 17時