第32話 タイムリミット ページ33
試合続行を選んだ越前は再びコートに立つ。
左目が見えない状態で。
驚く不動峰サイドや、揺れる青学サイド。
その声の全てをシャットダウンして、越前の試合に集中する。
試合は0−30からスタート。
サーブ権は越前。
伊武「そーだ、こい。まだコテンパンにぶっ潰したわけじゃ…!?」
いきなりサービスエースが決まった。
らかに先程よりもスピードが上がっていた。
桃「こんなところで負けるヤツじゃない。」
越前「この程度で騒ぎすぎだよ。」
越前はもちろん腕が麻痺することを十分理解していたが、伊武が執拗にその技を繰り返すため、サービスゲームを落とす。
どんどん迫ってきているタイムリミットを心配しながら大石先輩も応援している。
伊武はスポットを起こさせるだけでなく、その瞬間を狙うことができるというすごい才能の持ち主。
その天性のテニスセンスだけなら不二先輩に匹敵するほどの逸材だ。
ガーゼの血も少しずつ滲み始め、ゲームカウントはついに4−3と追いつかれそうになる。
『だけど、スポットには2つ弱点がある。』
橘「!?(なんて子だ…。)」
すかさず右手に持ち替えて打ち返し、その次は左手へと交互にラケットを持ち替えた。
普通はネットプレーで相手の打球を判断してラケットを持ち替えるなんて不可能だという声が上がる。
『スプリットステップなら可能だ。』
1本足スプリットステップが出来るのなら、ラケットを持ち替えることなど造作もないこと。
そして2つ目は、打たないのではなく、打てないスピンショット。
越前はトップスピンのショットを打たせないよう体の正面にくる滑る打球を打ち続けていた。
相手はもはや手がない。
そしてチャンスボールになったところで、リョーマの強力なスマッシュが炸裂。
バコンッ!
「ゲームセットウォンバイ!越前!6-3!」
青学の優勝が決まった瞬間だった。
モタモタしている暇はない。
『越前!こっちこい!!』
越前「えっ」
―――――――
表彰式
全く手が洗えてないまま見守ることになった私マネージャー。
両校選手がコート内に整列し表彰式が始まる。
地区予選準優勝・不動峰中学校、優勝・青春学園中等部!
石田は河村先輩の腕を気遣っているが、それを見ていた桃が悪戯にラケットを渡し…。
河村「ショッキーング!
ずんぶんな球打ってくれたな小僧!」
神尾「ようマムシ。よう。」
海堂「うるせえ。リズム野郎。」
246人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:黒薔薇 | 作成日時:2021年1月14日 1時