阿笠くんは・・・３

Episode108 ページ8

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夏休み
それがどれだけつまらないものなのかはだいぶ実感している
本来なら長期休暇は大好きだ
俺は基本何もしたくない体たらくな人間
何もせず何も考えずだらだらとしていていいならそれに越したことはない

しかし現実はそうもいかないのだ
多すぎるのではないかと言う課題(まだ小学生だぞ)
にも関わらずほぼ毎日遊びに誘ってくる降谷、諸伏

宿題はどうしたのかと聞けばもう終わらせたと
流石だな、優秀だ、俺は終わってねぇよ
兄さんにやっといてくれと言ってみれば当然断られた

まあそうだよな、わかってたよ
でも俺もうこんなのわかるって…
小学二年生の出されるものだぞ
俺にわからないわけないだろ

わからなくても俺はやらないだろうけど分かるからこそ余計に意欲が削がれる



「A〜！ボールそっち行った！」



ちなみに現在進行形で彼らと遊んでいる
ボール遊びなんて一生しないと思ってたのになぁ…
疲れるし正直帰りたい

俺は力の抜けた走りでボールをとりにいく
常に全力は出さない、これ常識
……俺の中では



「元気ないね」



諸伏がそう俺に話しかける



「疲れる」



普段から動かないんだ
汗は出ない方だから汗をかきまくったりしてるわけじゃないが
それでも息苦しいし息が上がる



「そうじゃなくて、寂しいから元気でないのかなって」



彼に連れられ、公園のベンチに座る
降谷も近くに駆け寄ってきた
俺は諸伏の言おうとすることの意味がわからず首を傾げる
寂しいって…なんだよ
なんかあったっけ

そんな俺の雰囲気を察したのか諸伏が続けた



「田中先生が産休？に入っちゃうから寂しいんでしょ？」



あまりに驚きの発言に俺は一瞬思考が停止した
なぜ急に田中先生の話になるんだよ
そう思う俺とは裏腹に、降谷は話の流れを掴んだようで納得の表情を浮かべた



「ああそれか、終業式の日からずっと元気ないもんな」

「普通だけど」

「Aって自分のことわかってないよなぁ、好きなんでしょ？先生のこと」



………ん？？
どうやらあらぬ誤解をしていたようだ
確かに田中先生は産休に入りそのあと育休
もしかしたら俺らが小四、小五になるまで戻ってこないかもしれない

普段保健室を利用している俺としては
前からの理解者で接する時間の多い彼女がいなくなるのは多少寂しく思う部分がある

どうやらそれを、好きだなどと勘違いしているらしい



「……好きじゃない」

「あのね！見てたら分かるんだよ！」



そうは言われても本当に違う…

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